四面楚歌状態のバンコク都知事。汚職問題を抱えるも、逆提訴も辞さない強気ぶり
政治資金の公私混同問題で辞職した某都知事と違い、バンコクのトップは決して引かないらしい。スクムパン都知事にバッシングの嵐が吹き荒れている。
3月、都庁で白アリ被害が発生。急を要するということで相見積もりをとることなく、親しい修理業者が呼ばれて工事が完了。請求額は1655万バーツだった。会計監査委員会のピシット所長は「明らかにおかしい。予算が決まる前に工事が終わった。こんなことがまかり通ることが信じられない」とコメントした。また、昨年末に話題を集めたタイの“ミレナリオ”こと“Bangkok Light of Happiness”も汚職を疑われている。170万人を動員した一大イルミネーションイベントに使われた予算は3900万バーツ。手がけたのが専門業者ではなく、都庁と親しい旅行会社だったこと、緊急予算が使われていたことが発覚し、同委員会は都知事と関係者8人を相手取り、証拠を国家腐敗対策委員会に提出する予定。
それだけではない。7月、民主党のウィラート氏は、都庁が1億6000万バーツの予算を使い、1台800万バーツのドイツ製小型消防車を20台購入したことを槍玉に挙げた。しかしながら、同車は欧州製のために左ハンドルで、よくよく調べるとバンコクの小道を簡単にすり抜けられるようなサイズではなく、時速は平均18キロ。3キロ先まで9分以上かかるため、理想とされる8分以内の到着には到底不可能だという。同氏は、未納入の残り15台についてはキャンセルすべきだと主張している。
今月12日、内務省は都知事と関係者の不正が行われていたとする文書を公表し、大きな話題を呼んだ。世間では、プラユット暫定首相に超法規的措置の憲法44条を行使し、都知事を辞めさせるべきという声が上がったが、同首相は「まだ調査中。法律に従って進めてほしい」とこの要望を退けている。一方、渦中の都知事は「委員会に有罪と判断されるまで辞職はしない。むしろ有罪だと騒ぐ人間を訴える」とどこまでも強気な姿勢を保っている。
日本ならすぐにでも辞職問題に発展しそうなものだが、ひるむ気配をみせないスクムパン都知事。任期はあと約8ヵ月。同じ党から厳しい批判を受けながらも、責務を最後まで果たせるのだろうか。