北部、中部での大雨が影響。被災規模は小さいが、予断を許さない状況が続く
2011年の忌まわしい記憶が甦る。最近、バンコクでは珍しく長雨が続いたが、知らず知らずのうちに各地で洪水被害が報告されていた。気象局によると、台風の影響でチャオプラヤー川の水量が増加。8月27日から9月21日の間に、42県で6万9700人が被災し、農地45万6000ライ(1ライ=1600㎡)が浸水した。
現在、最も深刻な被害を受けているのが、中部アユタヤ県。多くの日系企業の工場が集積しているのは言うまでもなく、在タイ日本人には切実な問題。同県のチャオプラヤー川の水流は毎秒1800㎥に迫り、川沿いの6郡73町が被災、1万8472戸が浸水した。水位は50〜100㎝で、一部報道では肩まで浸かった仏像の映像などが流されている。さらに10月初旬には、北部と中部で再び大雨になると予測され、農業・協同組合省灌漑局はチャオプラヤー川の水流が毎秒2000㎥にも上るとし、水位は前記よりも50〜70㎝上昇すると見込んでいる。
これに対し、政府と灌漑局は700万バーツの予算をかけ、チャオプラヤー川沿いにある長さ10㎞の防水壁を修理すると発表。同局は「ロジャナ通りとアジアハイウェイ周辺の工業団地と民間企業から要請があったため、早々にとりかかる」と説明した。また、タイ工業団地公社のウィラポン総裁は「アユタヤ県を心配する必要はない。ただ、念のためにタイ全土の工業団地に排水ポンプや防水癖を用意している」と明らかにした上で、注意すべき工業団地のエリアには、サハラッタナナコーン、バンワー(ハイテック)、バンパインの3つを挙げた。
同総裁も述べたように、最大の関心事は11年のような規模になるかということに尽きるが、灌漑局によると、チャオプラヤー川の水流は、11年時は毎秒4686㎥で、現在は2000㎥のため比較的安定した状態と言えるだろう。一方、科学技術省水資源・農業情報研究所のローヨン所長は「また低気圧は来る。100㎜以上の降水量が3日続くと、バンコクにも洪水の危険性は十分にある」と警告した。
現在の洪水が11年時に比べて小規模であることは間違いないが、予断を許さない状況が続く。このまま落ち着いてくれることを心から願いたい。