フェイク矯正器具は禁止ながら未だ横行
SNSによる投稿やネット通販などで被害拡大も
タイでは歯並びを改善する矯正器具が、カラコンやエクステと同じような感覚で若者の間で親しまれている。バリエーションも豊富で、オシャレなファッションアイテムとして認知されているようだ。ただ、そうした影響からか事件も多発している。最近では、200〜300 バーツの矯正キットなるものも販売され、問題が起こるのも当然だろう。
そもそも歯並びを治す「歯科矯正」は虫歯治療とは異なり、一般歯科とは別の専門技術が必要となる。そのため、治療費が高いことは日本もタイも同じだ。治療内容や期間にもよるが、日本では70〜100万円程度、タイでは3〜5万バーツが相場となっている。
歯並びを整えることは噛み合わせの改善はもちろん、虫歯や歯周病の予防といった健康を目的とするものだが、顔の印象が向上することで、コンプレックス解消にもつながる。また、歯科矯正が「富や地位の象徴」という認識がタイにはあり、特に富裕層の若い女性にとっては歯科矯正を受けることで、小顔効果やダイエットにも有効な手段と考えられているため需要が高い。
しかしタイでは、前述したとおり、それっぽく見える違法な歯科矯正治療や器具(フェイク矯正器具)の販売も横行している。違法な歯科矯正は美容院や露店などで1200バーツ(施術時間は15分程度)ほどで行えるものの、矯正器具は粗悪品。そのため歯のゆがみや口内炎、感染症などを引き起こす可能性が高い。2009年には違法矯正治療を受けて2人の少女が亡くなっている。
政府は、10年から違法歯科矯正器具の輸入や製造、販売を禁止しているが、現状は規制がゆるい。施行されてから早6年が経過しているが、歯科矯正ブームが下火になることはなく、「ファッション矯正」とタイ語で検索すると20万件以上がヒット。矯正治療のレポートがフェイスブックに投稿されていたり、矯正器具の購入方法や詳細なレビューがまとまったサイトがあったり、ネット通販では自分で勝手に取り付けることのできる歯科矯正キットなるものが格安で販売されている。さらなる規制や取り締まりの強化が行われなければ、被害はさらに拡大していきそうだ。