田村耕太郎
来タイ記念講演
特別座談会「海外での子育てを決断した理由」

週刊ワイズ主催の講演会が3、4日で開かれ、在シンガポールで『アジア・シフトのすすめ』(PHPビジネス新書)などの著書で有名な田村耕太郎氏(元参議院議員)が登壇。両日併せて、約200人が参加した。初日のビジネス講演は、「ASEAN地政学とテクノロジーを理解すれば明るい未来が待っている」と題し、地政学的に見たタイの優位性、域内他国の今後の行く末などを解説。アメリカのドナルド・トランプ大統領にも触れ、中国のさらなる台頭とアメリカの新外交方針により、アジアを中心に世界は大きく揺さぶられる可能性があるとした。不安定な将来を生き抜く手法として、「相矛盾する表現を併せ持つ『Oxymoron』という言葉を心に留めてほしい。全てのものは相反する性質を持っている。アジアはチャンスでありリスク、中国は脅威で活力でもある」と力説。また、激動の世界を生き抜くにはテクノロジーを知ることが不可欠であり、AI(人工知能)のスパコン利用により寿命は伸び、老化も制御可能と予見した。

翌日は子育て世代を対象に「21世紀に幸せになる子どもたちを育てるには」と題し講演。「インターナショナル教育が安価に享受できる環境は幸運。タイはアジアをはじめ世界で活躍できる子どもを育てられる素晴らしい環境」と強調した。また、最も重視すべき教育方針は「子どもが道を切り拓いていけるように多様な選択肢を持たせてやること」とした上で、「多様な人種の中で自分で考える頭を作るインターナショナル教育の出番。日本で活躍できる人材にしたいと思っても、今の日本に合わせた人材にしてはいけない」と説いた。

 

「海外での子育てを決断した理由」

英語教育の重要性を解きながら、自らも2014年、当時2歳のお子さんを連れてシンガポールへ転居した、田村耕太郎先生。自らの意志でタイ・バンコクへ移住した日本人家族(お母さん)に集まってもらい、座談会を開いた。

Aさん 在タイ6年。9歳の子どもは中華系インター校
Bさん 在タイ3年。3歳、4歳、11歳の子どもは、名門NIST
Cさん 在タイ4年。9歳の子は、私立バイリンガルスクール、6歳の子はイスラム系インター校に通っている
Dさん 在タイ2年。18歳の子どもは、ブリティッシュ系インター校

あまたある国の中で、なぜタイを選んだのですか?

Aさん 子どもが生まれ、将来を考えた末にグローバルで生きていけるよう海外移住を考えました。東南アジア各国を視察した結果、物価が安く、日本人が多く住んでいるタイを選びました。
Bさん 夫の務めていた会社が東南アジアへシフトしようとしていたので、視察を兼ねて訪れ、気に入り移住しました。
Cさん 15年間アジア圏を周る仕事をしており、バンコクは日本の次のマイホーム的な感覚でした。日本の学校のやり方に疑問を感じていた折、夫も海外で挑戦したいと言ってくれたことで移住を決断しました。

お子さんはいかがでしょう

Cさん 上の子(9歳の双子)は、タイの私立のバイリンガルスクールで、タイ語、英語、中国語をちょっと勉強しています。下の子(6歳)は、イスラム系のインターに通わせています。

イスラム系? 珍しいですね

Cさん 正直、学費が安かったからです(笑)。それに生徒全員、母国語が英語ではないのが良いですね。一斉に英語を習うので、劣等感を抱かずに学べています。バンコクには、インター校の選択肢がすごく多く、学校を選ぶのにはうってつけです。

私立のテストは、どのような内容ですか?

Cさん タイ語で5教科、英語で5教科です。タイの私立はイスラム系よりも安く、年間10万バーツぐらいなんです。タイ人8割、日本人は二人だけです。

Dさんは、お子さんが大きいですよね

Dさん グローバル人材に育って欲しいとの思いで、移住を決断しました。物価の安さと治安の面でタイが最適との判断です。

学校はどうやって?

Dさん 英語が得意だったので、ブリティッシュ系のインター校に編入しました。今では、試験で欧米人を抜いてトップ3に入るようになって、自信がついたようです。

 お子さんと将来の日本の関係をどう考えていますか

Aさん 私たち親は、日本には帰らないと子どもにも伝えています。9歳の子も、このままタイで暮らしたいと言ってくれています。親としては、世界で通じる子どもに育ち、自分で生きる力を身に付けて、どこでも好きな場所に羽ばたいてもらえればと願っています。
Bさん 主人が日本人(欧米人)ではないので、逆に日本人としてのアイデンティティをつけてあげたいと思っています。多様性に富んだタイでは、容姿を言われなくなり、本人もイキイキしています。長男は、将来日本人と仕事すると決め、日本語を猛勉強しています。日本の文化や伝統を通じて、日本を誇りに思って欲しいですね。
Cさん 日本人の特性である、丁寧に仕事をするとか、挨拶をしっかりやるなど、日本人らしさを学ばせています。
Dさん 子どもたちの日本語は何も問題ありません。今は英語を学び、多様性豊かなタイにいるうちに中国語やロシア語も勉強したいと言ってくれています。

日本に留まっていたら、子どもの未来はどうなっていたと思いますか

Aさん 来タイしてからは毎日色んな話をする時間が増えました。日本式の教育は勉強のできる子を育てることはできますが、家族のつながりは、タイにきてからの方が深いです。

学校生活はいかがでしょう

Aさん 中華系の学校は、基本的にいじめもないほど宿題尽くめなんです。いじめる時間はないのかもしれません。

不登校とかはないですか

Cさん 学校側は、来たくなければ別に来なくていいんですよ。ある友人の子どもが「英語もできないし、学校へ行きたくない」と言った際、学校側(先生)は「学校は泣きながら来る所じゃないから、たくさん泣いて諦めがついたら遊びにいらっしゃい」と。学校はいつでも待っているスタンスです。
Aさん 日本は、勉強ができるといじめられ、先生から褒められるとからかわれます。タイは先生に褒められれば、友達から尊敬の眼差しを受けます。

移住はオススメですか?

全員 最初は生活に慣れるのに時間はかかるしょうが、子どもを育てるという点では学校の選択肢も多く、多様性に富、将来を考えながら軌道修正もできます。とてもオススメです!!

 

田村耕太郎——

鳥取県出身。元参議院議員(2期)。早稲田大学、慶応大学大学院(在学中にフランス高等経営学院に単位交換留学)、エール大学大学院国際経済及び開発経済学科などを卒業。新日本海新聞社相談役。前大阪日日新聞代表取締役社長。2014年からシンガポールに居を構え、国立シンガポール大学リー・クワンユー公共政策大学院で兼任教授として日本の政府・民間のリーダー向けのエグゼクティブプログラムを主催し、アジアで活躍する日本人リーダーの育成に励む。幼児教育の日本のリーダー、ポピンズ、世界最先端のテクノロジー教育塾Keys Academy、世界最大のインドインターナショナルスクールGIISのアドバイザー。

 

国立シンガポール大学 リー・クワンユー公共政策大学院とは?——

ASEANの地政学を学ぶ、世界最高の日本人向けエグゼクティブプログラム。新プログラムは5日間(毎日9時〜夕方5時)。ASEANとインドの地域研究と地政学を中心に、最新事例・最新事情を学ぶ。質疑形式の講義と視察を組み合わせている。アジアの地政学研究において最高峰にあるリー・クワンユー公共政策大学院の教授陣と外部の専門家が講師だ。講義は英語で、日本語同時通訳。興味のある方はメールにて、ご連絡ください。
info@wisebk.com(週刊ワイズ)

 

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