Capital Nomura Securities PCL. 

発展途上市場タイで十二分に経験を生かす

Capital Nomura Securities PCL.

社長 中村 貴仁

《プロフィール》 1967年生まれ。東京都出身。1990年慶應義塾大学経済学部卒業。同年野村證券入社。94年新潟支店営業課、2001年人事部人事課長、08年営業企画部次長、10年八王子支店長、13年天王寺支店長を経て15年4月から現職
 

―野村グループの中で、唯一の海外市場での上場会社と聞きました
タイ証券取引所の歴史は40年ですが、弊社のタイ進出はそれより少し前で、今年で45年の節目を迎えました。創業者である野村徳七のお孫さんが初代の社長として立ち上げた、グループにとっても思い入れの深い地です。同市場に上場したのが、1988年です。取引所の設立からタイ証券業界の変遷を見てきたことは確かです。



―昨今のタイ市場はいかがですか
証券投資の口座数については、タイは未だ110万口座と言われています。人口が約6800万人ですから、比率は低いですね。しかも、口座を開いている人は、いくつかの金融機関に分けて保有しているので、実際は約30万人台とも言われ、拡がる余地はあります。

―業績は好調のようですね
昨年、日本の野村ホールディングスが弊社を完全子会社化しました。とはいえ、タイ進出から45年の歴史がありますので、これまでのビジネスモデルが急に変わる訳ではありません。現在、社員数は約550人(日本人4人含む)です。取り扱う主な商品はタイの株式が中心で、顧客もタイ人がほとんどです。収益は、株式の売買時に発生する手数料収益などが半分以上で、あとは債券ビジネスやM&A、IPO(新規上場)等による収益ですね。タイは、まだ純粋な株式の売買がメインで、今後、いろいろな商品へ派生する途上にある証券市場と言えるでしょう。



魅力的な市場ということですね
仰るとおりです。タイは、ASEANのフロントランナーとして、日本と同様に少子高齢化社会になる可能性が高い国です。日本の投資家はリスクヘッジとして多種多様な金融商品に分散投資を行うようになりました。タイの投資家の投資対象も、今後は株式だけでなく、投資信託や外国債券など段々と多様化していくはずです。だからこそ、野村が日本で積み重ねてきた知恵と経験を生かすチャンスでもあると感じるのです。



―海外赴任は初と聞きました
国内では主に営業畑を歩んできました。海外部門の経験がまったくないなかでの異動でした。将来のリテール市場の拡大が期待されるタイだからこそ、日本で経験を積んだ自分にでもできることが何かあると信じています。先ずは、タイという国から真に必要とされる企業体を目指し、職業倫理や法令順守においては寸分も社会の価値観とずれることなく、常に社員が高い問題意識を持った、強く真面目な企業に育てたいです。一方で、弊社は、タイの証券業界内で唯一、新卒採用をしています。失業率が1%という売り手市場のタイでは、良い人材の獲得は非常に厳しいのですが、それでも、時間と労力をかけて、将来を見据えた強い〝野村〞を支える人材を早期から養っていくことが大切だと考えています。



―上場企業のトップとして、どう感じていますか
責任の重さを痛感しています。収益を上げることも当然大切な目標ですが、上場企業として社会的責任も重く、多方面に影響力があります。自分自身の立ち居振舞いにも常に緊張感を持った行動を心がけています。また弊社はリテール業です。課題や問題、知恵など必要な情報は常に現場にあるものです。だからこそ、可能な限り現場に足を運び、社員の言葉に耳を傾ける努力をしています。



―学生時代からメモ(日記)を取り続けていると聞きました
今では、大学ノート数十冊にも及んでいます。人と話したことや、気づいた点を書き残すクセを付けているんです。お客様からいただいたお言葉も記してあり、たまに読み返しますが、自分にとってこれほどおもしろく、ためになる読み物はありません。当時を振り返り、「あの頃の自分はこんな潔い感じ方だったのか」と原点回帰にも活用していますし、自分への戒めにもなっています。



―野村證券とは、どんな会社でしょう 
私にとって自分の器を広げる機会をたくさん与えてくれた大好きな会社です。東京大学の先端科学研究センターにも3年間通わせていただきました。また、野村の看板のおかげでこれまでたくさんの、人生経験が豊富で人間的にも素晴らしいお客様とお会いすることができました。そういう方々と一生のおつきあいができる関係となり、それは自分の心の財産でもあります。


 

編集後記

言わずと知れた、日本最大の投資銀行・証券会社グループである野村HD。タイは同社グループにとっても思い入れの深い場所。タイ赴任前、中村氏は大阪の天王寺支店長として、バリバリのリテール業務に携わっていた。証券会社にとってリテールは〝基本のき〞。対ヒトである以上、誠実な人柄が好まれる。何十年間、朝6時台に出社し、日々の思いを日記に書き続けてきた同氏の芯が〝ブレ〞ることはない。市場の飛躍期を前に、強固な基盤で挑みたい同社にとって、まさに適材適所。(北川 宏)

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