慢性的な電力不足とゴミ処理問題の解決、景気刺激策のために暫定憲法44条を発令
20日、なかなか埒が明かない状況に、プラユット暫定首相がオオナタを振るった。政府は、かねてより指摘されていた慢性的な電力不足の問題、ゴミ処理問題を解決するため、〝超法規的措置〞暫定憲法44条の下、発電所やゴミ処理場などの建設計画を明言。国境付近の経済特区10県では、細かい建築基準を定めた法律を免除するという強権を発動させた。
タイでは毎年のように〝停電の危機〞が叫ばれ、電力については心もとない実情がある。根本的な問題は、天然ガスに依存している点。発電総量の実に60%以上が天然ガスであり、さらにエネルギー源をミャンマーに依存していることも悩みを深刻化。ミャンマーからの天然ガスの供給が停止するとき、「バンコクでブラックアウトか」と報道されるのは、もはや〝毎年恒例〞となっている。また、世界銀行によれば、今年のミャンマーの経済成長率は約8%と好景気が続くため、自国優先の原則を考慮すれば、リスクも拭えない。つまり早急にタイは自国で電力を賄わなければならない状況なのだ。
ただし、そうは問屋が卸さない。タイでは何かと大型建造物が建つことに対し、地元民からの反発が起こり、環境アセスメントの基準が高いこともあってか、実現しないことが多々ある。〝原子力村〞のような恩恵もなければ、リスクのある建物を受け入れる理由はない。発電所やゴミ処理場には、環境汚染のイメージがつきまとい、否定的な反応は明らかだったため、それを禁止する〝44条〞を発令したわけである。
当然、この強権発動に対して拒否反応も生まれている。22日、南部パッタニー県ソンクラーナカリン大学のセミナーでは「44条による発電所建設で、近隣住民3000人の健康に被害が及ぶだろう。お金のためなら何でもしていいのか?」という声が上がり、南部のスラーターニー県バーンナーサーン市では「再考してもらいたい。県知事と国家人権委員会に反対の陳情書を提出する」と待ったをかけた。
前述したように、この国の電力不足問題は喫緊の課題。そして公共事業は景気刺激策の一つでもある。多少強引なりとも政府が推し進めたいのは当然だろう。〝44条〞だからこそ実現が可能であり、まさに〝超法規的措置〞の真価を発揮することになる。