相次ぐ入札で動き出す都市鉄道計画にはらむ危うさ
バンコク都市鉄道計画がこぞって動き出した。タイ国高速鉄道公社(MRTA)は10月31日、都市鉄道オレンジライン(タイランドカルチャーセンター〜ミンブリー間21・2㎞)、事業費797億2643万バーツの入札を実施。建設大手チョーカンチャンとシノタイの企業連合、イタリアンタイ(単独)、韓国企業と組むユニーク・エンジニアリング&コンストラクション(UNIQ)の3社が応札した。
また、11月7日には、モノレール型都市鉄道ピンクライン(ケーライ〜ミンブリー間34・5㎞)、同534億9000万バーツと、イエローライン(ラップラオ〜サムローン間21・2㎞)、同518億1000万バーツの入札が行われ、いずれもバンコク高架鉄道を運営するBTSグループ、建設大手シノタイ、電力大手ラチャブリーホールディングスの3社によるJV(ジョイントベンチャー)“BSR”と、建設大手チョーカンチャンの子会社でMRT(地下鉄)を運営する“BEM”の2社・グループが応札した。同2線については官民連携(PPP)で整備され、政府は土地の取得を担当。その他の建設工事や車両の調達・運行に至る業務を民間企業に委託する。
この矢継ぎ早な鉄道計画の動きに反応するのが路線地価だ。すでにデベロッパー各社は、将来の路線周辺の発展を見越し、土地の購入を急いでいる。オレンジラインが通る、タイランドカルチャーセンターから、MRTラマ9世駅周辺の地価(売買価格)は、1タランワー(4㎡)あたり約100〜120万バーツまで上昇。住宅街や企業が多いラップラオやシーナカリン通りを走るイエローラインでは、他の路線との乗換駅周辺などで二桁台(%)の上昇が続く。まさに、沿線開発花盛りといった具合だ。
だが、今年8月に開業したバンコク都内バンスー〜隣県ノンタブリー・バンヤイ地区(全長23㎞)を結ぶ都市鉄道パープルラインを思い出してほしい。開業後の1日の利用者数は平均2万人と、当初見込んだ7〜10万人には遠く及ばず、交通利便性向上や沿線開発を見越して建てたコンドミニアムは、供給過多状態になっているという。沿線開発の先に描く青写真は、ほどほどにしてはいかがだろうか。