タイでも長らく信じられてきた降霊術師の存在
死者ではなく、創作物の主人公も呼び出せる!?
仏教徒が約95%を占めるタイでは、ブッダへの信仰は日常的であるが、〝お化け〞の存在を怖がったり、アミニズム(精霊信仰)にも寛容的な側面も持っている。多くの人が〝超自然的存在〞なものに対して、畏怖の念を抱く。最近、タイで話題になっているのが、降霊術師。あらためて説明すると、降霊術師とは「霊力を持つ人間が死者を自分に降霊させ、アドバイスを行う人」のこと。日本でいえば、青森県・恐山でのイタコが有名だろう。タイにも降霊術師は長らく存在し、南部プーケット県のキンジェー(菜食週間/10月13日〜21日)時期には、降霊術師は口や頬に刃物を刺し、中国の神様の霊力が宿っているため、痛みを感じないとアピールする。また、重病患者に対しても神様の力は効果があるとされ、延命できると信じて、自ら降霊術師を目指そうとする人もいる。ただ、一方で「霊力で治す」「運気が上げる」といった誘い文句につられ、金品を騙されるケースも少なくない。さて、なぜ降霊術師が注目されているかというと、これまでは神様を降霊させるのが一般的だったのに対し、今回は創作物のキャラクターだったこと、これまでになかったヒンズー教の神様が登場してきたことが挙げられる。例えば、タイの〝詩聖〞スントンプーが描いた神話の主人公だったりするのだが、これは極端に言ってしまえば、ドラえもんを降霊させるのと同じこと。想像するだけでなかなかシュールだ。動画を見れば、思わず吹き出しそうになるものの、本人はいたって真面目。そこで、あるテレビ番組が降霊術師3人に真偽を確かめるべく、実験をすると、案の定、質問に対してしどろもどろ。神話のストーリーを理解していれば答えられる問いも、誰一人から正答は得られなかった。さらに死体にムチを打つように、番組スタッフは、一人の巨漢の降霊術師が得意とするパフォーマンス、「私が踏んづけても壊れない(霊力があるから)」というプラスチック製のネズミを確認すると、中には頑丈な鉄が入っていたオチもついた。少し大人げなさも感じつつ、金品を騙そうとしていたのであれば、情状酌量の余地はない。ちなみにyoutubeで「タイ、菜食」と検索すると、かなり過激な映像が見られるが、心臓の弱い方は注意してほしい。