国際社会からの批判どこ吹く風は、改革断行への確固たる決意か?
7月31日、軍政の国家平和秩序維持評議会(NCPO、議長・プラユット陸軍司令官)が実権を握るタイで、暫定憲法に基づく国会機能を果たす立法議会が発足。8月7日に招集され、8日には元最高裁判事のポンペット氏を議長として選出した。そして、タイ地元紙の下馬評通りならば、早ければ、13日頃には、暫定首相にプラユット議長が就任する運びだ。
「これまで実権を握ってきたNCPOとどう違うの?」と疑問を抱く人もいるだろう。それもそのはず、招集された立法議会のメンバーを見ると、定員200人のうち、軍人が半数以上(105人)を占め、そこに、有識者を中心とする民間人(85人)を加えると約8割が軍政側の面々となる。
軍人割合が3割程度だった2006年のクーデター後に設置された立法議会と比べれば、今回の議会が、いかに軍人色が濃く、強い影響力を持っているかもわかる。また、軍人議員の内訳も、プラユット氏の士官学校時代の同期や実弟などが名を連ねる最強の布陣を敷いた。同議会を「迷彩柄議会」と例えたタイラット紙は、「どんな問題も、すぐに実行できるだろう」と評価。形式的には、タイの政治がNCPOによる一方的な命令から、多数決を経た議会政治へと変わる。ただ、NCPOも存続し、引き続きタイ政治を監視するため、プラユット氏が暫定首相を兼務すれば、絶対的な権力を手中に収める。当然、国際社会から批判も上がるだろうが、一方で逆の声もあるという。
プラユット氏は、NCPO発足から2ヵ月間で、宝くじ販売や屋台業を営む人から“みかじめ料”を搾取する輩を一掃し、警察官や役人といった権力者が賄賂を要求する汚職体質改善に注力してきた。つまりは、伏魔殿と言われた一部の富裕層が持つ利権構造へメスを入れたのだ。世間には、軍政という突出した力で、本気で改革断行を実行していると映ったようだ。それが本当であれば、国際社会の批判どこ吹く風と、過度に軍色を強めたのも頷ける。民政移管まであと1年強。もう少し見守りたい。
【写真上】立法議会議長に選出されたNCPO法律顧問のポンペット・ウィシットションシャイ元最高裁判事