MBK前で発砲殺害事件が発生。けんかを超えた惨事が増加している
8月26日、MBK前で発砲事件が発生。死亡したのは、サイアムにあるラチャモンコン技術大学(職業訓練学校)に通う二十歳の学生。犯人はまだ逮捕されていないが、かねてより対立していたパトゥムワン工科大学の生徒だとみて、警察は捜査を続けている。また、9月17日には、ラチャモンコン技術大学の生徒26人がMBK前で酒盛りをし、300人以上の警察・軍隊が出動して、麻薬をはじめナイフなどを押収した。
かねてより何かと問題視されていたタイの職業訓練学校が、再び注目を浴びている。最も報道されているのが、職業訓練学校の生徒同士による“けんか”である。
そもそもタイの職業訓練学校とは、日本でいう高等専門学校。製造業、繊維業、情報・通信、農業、漁業など仕事に直結するスキル獲得が目的。中学を卒業後、3年の専門学校、その後2年の職業学校へと進む。
ただ、そのイメージは決していいとはいえない。通常4年生の大学を卒業すると、月給は最低1万5000バーツとされているが、職業訓練学校の卒業生は最低賃金の1日300バーツだといわれている。
2013年の前期に職業訓練学校の生徒が起こした事件は12件、負傷者24人、死亡者1人。今年の同時期の事件は52件、負傷者66人、死亡者10人で、その数は明らかに増加傾向にある。抗争に使われる武器は、カッターから鉄の定規、拳銃までと多種に渡る。拳銃はネットで検索すると簡単にヒットし、人気の「ペン型銃」は700バーツで購入できるという。
日々、激化する惨状を受け、プラユット暫定首相は、防犯カメラの設置やたまり場の取り締まり強化、武器を所持する生徒への罰金(100B)などを発表。3回以上、事件を起こした学校は、翌年の生徒募集の禁止などの厳しい措置を科す。
タイ王国警察は、けんかの原因について、①未熟さ②抗争が沈静化せず拡大する③先輩や仲間から認められるため、だと説明する。けんかの理由は日本の中高生とも変わらない。しかし、拳銃を使い、人を殺す現状は中高生どころかギャングそのもの。輝かしい未来を待つ若者が選ぶ道として、死はあまりに儚い。
【写真上】職業訓練学校の生徒らがMBK前で酒盛りをし、軍隊までが出動した