ここ13年間での行方不明者は約2300人
情報提供呼びかけるラッピングバスが走る
多発する子どもの行方不明事件にタイが揺れている。人身売買防止を目指すミラー財団は、2003年〜16年に、タイで行方不明となった18歳以下の子どもが2296人にのぼることを明らかにした。年齢別にみると、0歳〜10歳は234人、11歳〜15歳は1353人、16歳〜18歳が709人。今年は1月〜4月までで、行方不明の子どもは0歳〜10歳が14人、11歳〜15歳は83人、16歳〜18歳は33人で計130人。1年の3分の1の時点で100人を超えており、行方不明者は毎年増えている。
誘拐後に保護された子どもに聞くと、誘拐された場所は、家やその近辺、寺院でのお祭り、病院、公園、デパート、親の職場など、比較的安全だと考えられている場所が多い。手口は、やさしいふりをして子どもや親に接近するほか、お菓子やおもちゃといった子どもの好きなもので釣るのが大半。同財団によれば、犯人の動機は子どもへの性的暴行、人身売買に加え、路上で物乞いをさせたり、工場で働かせたりしているほか、誘拐した子どもを自分の子どもとして育てるケースもあるという。
誘拐防止のため、人身売買取締警察のゴラチャイ少将は、ミラー財団の協力を得て行方不明者捜索センターを設置した。同センターは被害者、犯人の情報や誘拐事件に関する証拠を集積するデータシステムを構築。誘拐事件が起きると、過去の犯罪歴などから犯人を特定し、追跡できるようにする。
4月22日、ミラー財団は児童支援を手がけるNGOのTaejai.comとデジタルマーケティング会社のPlan B社の協力を得て、行方不明児童捜索を訴えるラッピングバスをタイで初めて公開した。5台のバスの車体には行方不明になった子どもの顔を貼りつけ、路線バスとしてバンコクを走る。費用の10万バーツはTaejai.comを通じた寄付でまかなった。ミラー財団のエカラック理事長は「広告を通じて誘拐の問題を知ってもらい、早く行方不明の子どもをみつけられるよう情報を集めたい」と話す。
誘拐の予防には犯人の行動パターンの周知や、親に注意を促すなど啓発活動も重要となる。今後も行方不明者の発見も含め、官民を挙げた情報提供が重要となるだろう。