論争呼んだPR映像

タイ伝統舞踊劇「コーン」の主人公が登場する観光庁の動画
「タイの違った面のアピールに」と首相が評価する一方、不謹慎との声も

 

タイ国政府観光庁が作った観光PR映像が、世間の注目を集めている。
映像では、インドの古典を基にしたタイの叙事詩「ラーマキエン」の主人公ラーヴァナをはじめ、登場人物達がタイ国内の観光地でゴーカートに乗ったり、伝統菓子を作るシーンがミュージックビデオ風に盛り込まれ、映像を見た人からは「クリエイティブな内容」とコメントがつけられるなど、高い評価を受けていた。
しかし、文化省芸術局舞台芸術事務局のラッダー元局長は20日、タイ演劇専門学校の講演の中で、「魔王であるラーヴァナを、コミカルな表現に使うのは不謹慎」と批判。また、タイ文化省も「一部、不適切な内容がある」と発表。同省のティラパット氏は、「ビデオに出てくる“コーン”は、アユタヤ王朝から受け継がれるタイ伝統の仮面舞踊劇で、かつては王族のみに披露されていた特別な文化。衣装も高尚なもので、それをコミカルな映像に登場させるのはよくない」との見解を示した。
これに対し、タイ映画監督協会会長であり、同映像を監督したバンディット氏は「タイの観光促進のために作ったのであって、ラーマキエンの価値を下げるつもりはなかった」と説明。要請があれば、内容の修正や削除も厭わないと語った。
議論が沸き起こる中、ワット・ロンクン創立者でタイ人間国宝のチャルムチャイ氏は「悪いイメージを植え付けるものではない」と製作側を擁護。プミポン国王の長女、ウボンラット王女も「ラーヴァナが伝統菓子を作ってはダメだと誰が決めたのか。今は、もっと広い視野で物事を見る時代」とコメントを寄せられた。さらに、プラユット暫定首相は「伝統文化は守るべきだが、タイの異なるイメージを伝えるのも大切」とし、王族や一国の宰相が次々と賛成を表明した。
世論も「この映像が、タイの文化に傷をつけるとは思わない」「コーンを知ってもらえるいい機会。タイの観光地もアピールできる」と多くの人が支持。しかし、文化省と同監督の話し合いにより、ゴーカートやスピードボート、伝統スイーツ作りなど、“不適切”とされるシーンは動画から削除。現在は、修正版が公開されている。

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