人気を集める闇ルートから購入するポイントまで、
“タイ流運試し”の実情を紹介する
タイ人を評すエピソードとして「賭け事が好き」というのは有名な話。元々、ゲンを担ぐ文化が根付いているからかもしれないが、街の至るところでチェス(?)に興じる人たちを見かけ、宝くじの販売は最もポピュラーな光景の一つとなっている。
聞けば、宝くじには政府発行の公式と闇ルートの非公式(以下、闇くじ)があるという。タイ健康促進財団のノッパナン・ワンナテープ医師が行った2011年の調査によれば、闇くじの購入者は郊外に住み、低所得者、低学歴の高齢者が多く、一攫千金を夢見るものの、くじが外れても再び購入する傾向が強い。闇くじは1バーツから購入可能で、下二桁が当たれば、65倍の配当になる(同数字は地方によって違う)。政府発行のものよりも配当がよく、配当金を受け取る手続きが簡素なため、自ずと人気が集中するようだ。購入はもっぱら口コミ経由らしい。
また、2011年にチュラロンコーン大学社会調査研究所が行った調査によれば、年間5000〜1万バーツの所得者の550万人が定期的に宝くじを購入し、2万バーツ以上では約440万人が同様に定期的に購入しているという。人口が6700万人(世界銀行調べ)という事実から考えれば、ほぼ6人に1人が“中毒者”だということがわかる。
購入する際にポイントとなるのは、とにかくゲンを担ぐこと。夢占いの本がタイではかなり人気で、夢に出てきたものを何かしらの数字に関連付けて宝くじを購入するという。また、ときに首相の車のナンバー、ときに長寿の樹木に数字が浮かび出てくるまで粉を塗りたくるというから、その努力は実に涙ぐましい。先日亡くなった国民的存在の人気僧侶、ルアンポー・クーンさんが享年91歳だったため、下二桁が91と92の宝くじがタイ全土で売り切れるという現象も起きた(当たらなかったらしいが……)。
仏教大国でありながらも、アニミズム(あらゆる物に霊が宿るという考え方)も浸透しているタイ。宝くじが日常生活と密接なのも自然な成り行きなのかもしれない。