「英・米は心配しないで」。
プラユット暫定首相が目指すのは、軍事政権でも、国民が幸せと感じる社会
英国や米国からは心配されていますが、タイの軍事政権は、世界に類を見ないほど上手く行っています。新しいスタイルの政治だということを証明しますよ」と、プラユット暫定首相は、日に開かれたタイ投資委員会(BOI)主催のセミナーで、高らかに現軍事政権の正当性を訴え、長期化を示唆した。もちろん、同暫定首相が言いたかったのは、軍事政権の代名詞である〝独裁〞ではなく、「いまのタイの経済的発展には、この方法が合っている」との意味合いからだ。新しいスタイルとは、軍事政権下での民主化。つまりは、プラユット暫定首相がクーデター後、しきりに唱えてきた〝タイ式民主主義〞を指す。セミナーでは、「 経済特区は、陸でつながる諸国との貿易強化のため。産業クラスターとスーパークラスターは、外国投資を念頭に置き、産業集積を図り、自国産業(人材)のレベルアップにつなげる」と国民受けのいい、経済政策について丁寧に説明した。タイ暫定政権が、経済重視であることは確かで、過去の政権で、辣腕を振るったソムキット副首相(経済担当)を復帰させたのも頷ける。一党独裁体制でありながら、経済発展を遂げた中国。トップダウンだからこそのスピード感は、今のタイも同じ。「軍事政権下となり、367もの国民生活に直結する法改正ができた。これまでの政権は、国民を置き去りにしてきた」と意気揚々な姿からは、「俺だからできた」とも受け取れる。 同暫定首相の人気度の高さを鵜呑みにすれば、現状は国民生活に犠牲を強いてはなさそうだ。ただ、識者らが「真の評価は、貧富の格差をどこまで是正できるかにかかっている」と口を揃えるとおり、 タイでは、個人債務は膨れる一方で、貧富の格差も拡大するばかり。首相は「警察や役人から賄賂を要求されたら、私に言ってほしい」とクリーンアピールにも余念はないが、米国務省はタイを人身売買で最悪のカテゴリーに分類したことも事実。経済悪化に歯止め(施策を打った)をかけたのならば、次に着手するのは、富裕層に有利な現状の税制改正だろう。政権の良し悪しは、自国民が決めることだが、国際社会を納得させるには、冒頭の発言を完遂するしかない。今後の手腕発揮が楽しみだ。