軍政に「YES」

国民投票で新憲法草案を承認。国民がプラユット暫定政権を認めた日

 

7日、新憲法草案の賛否を問う国民投票が行われ、賛成61・35%、反対38・65%と賛成が反対を大きく上回り、草案は承認された。同時に、5年間の経過措置として、首相指名投票権を持つ上院議員の任命を軍政が担う是非も、賛成多数で承認。タイ国民は2014年5月のクーデターから続く、現軍事政権に「YES」の判定を下した。
10日、プラユット暫定首相はテレビを通じて「今後は、選挙に関わる重要4法を作成し、来年には総選挙を行える」と述べた上で、「それまでは44条を行使し続ける」と“伝家の宝刀”を抜き続けることを宣言。強権アピールで、草案反対派への締め付けを強化し、抑えつけた格好だ。
とはいえ、今回の承認で反対派の急先鋒だったタクシン元首相派=赤シャツの弱体化は免れない。投票結果でも、これまで圧倒的に強かった東北部で賛成48・58%、反対51・42%と辛勝に留まり、赤シャツリーダーのチャトゥポーン氏も「これが民意。次期選挙には出ない」と敗北を宣言した。投票前に、赤シャツと対立軸にも関わらず、反対を表明していた民主党のアピシット元首相は「民意を尊重する」と承認を認めるコメントを発表。だが、同党関係者は「アピシット氏は、今後求心力を失うだろう。なぜならば、支持基盤のひとつである南部で、同氏の反対を無視して多くが賛成に投じた。新党首の決めどきだ」と党首続投に苦言を呈した。
反対票を投じた多くは「軍政色強く本当の民主主義ではない」や「言論統制により運動を禁じられた」と投票事態の正当性に疑問を投げかけた。ただ、今回の結果は、民主主義の根幹である1人1票の原則に反してはいない。つまり、国民は軍事政権であろうとなかろうと、治安を保ち、安定した政権運営を続けるプラユット暫定政権を評価したに過ぎず、民意そのものである。
いずれにせよ、タイは民政移管へ向けて一歩前進した。新憲法は修正を加えた上で、国王の署名を経て、早ければ11月にも公布され、来年いよいよ総選挙が行われる。果たして、新政権発足=民政移管後のタイはどうなるのか。今後を注視したい。

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