天然ガスから再生可能へ。他国の依存から脱却目指す
2013年、天然ガスを供給するミャンマーのガス田の保守点検が延期することで、バンコクが停電するという噂が広がり、インフラの脆弱性を露呈したタイ。経済にも大きな影響を与えかねないと、電力問題は長年に渡る悩みの一つでもあった。
タイは93%を自国で発電しているが、エネルギーの輸入コストが大きなネックとなっている。2013年の輸入エネルギーから発電に使われる割合は天然ガス46%、石油36%、石炭・亜炭16%。輸入総額は、2010年が9000億バーツ、2011年が1兆2000億バーツ、2013年が1兆4200億バーツと年々上昇。東南アジアの電力消費量は、1位のインドネシアに続き、タイは2位であり、もはや自国で賄える電力が、急激な経済成長に追いついていない。
昨年、国内で発電に使われたエネルギー比率は、天然ガス67%、石炭・亜炭20%、再生可能9%、水力3%と続く。約7割を占める天然ガスは、20年後に枯渇するとされ、環境汚染も叫ばれるなか、再生可能なエネルギー比率の向上は至上命題となっている。
そこで注力するのが、バイオマス発電所。生物資源から発電でき、ローイエット県に発電所の建設が決定している。また、ゴミを再利用する廃棄物発電所も注目を集め、インフラ整備の大半を担うPTTのスロン・ブーラクン氏は「ラヨーン県のゴミの3分の1を処理できる」と話し、エネルギー省の次官は「18ヵ所のバイオマス、バイオガス、廃棄物発電所の建設が承認された」と明らかにした。ちなみに原子力発電所の建設については、東日本大震災の影響から時期尚早と判断され、現在はペンディング状態。
「2015〜2035年 発電力開発計画」を掲げるプラユット首相は、先日ミャンマーを訪問した際、「ダウェー経済特区以外にもエネルギーのこともお願いした」と言及。もはやすべてを自力で賄うには不可能なのが現実であり、2015年以降はラオスから7000メガワット、中国から3000メガワットの電力購入が決まっている。
ようやく追い風が吹いてきたタイ経済に弾みをつける意味でも、ぜひ安定した電力供給を望みたい。