政府が4つの施策を発表。2036年には人口の3分の1に
あらゆる国で抱えている高齢者問題。タイも例外ではなく、2008年に人口の1割だった高齢者(60歳以上)が、16年には14%に拡大。25年には20%となり、36年には人口の3分の1を占めると予想されている。現在、タイでは高齢者に対して、月に500バーツ以上の助成金を支給し、今年は約2870億バーツを支出。ちなみに19〜59歳と高齢者の割合は、現在4対1だが、25年後には2対1にまで縮まるとされ、前述の予算では到底カバーできない。
同問題を解決するため、プラユット暫定首相は8日、以下の4つの施策を発表した。
①高齢者の雇用促進。企業が高齢者を雇った場合、一部で法人税を免税。条件は、高齢者の数が全従業員の1割までで、月給は1万5000バーツ以内。また、タイ全土で職業訓練センターを設置し、17年から施行する。
②高齢者向け住居の建築。チョンブリー県、チェンマイ県ほか4県に、“シニア・コンプレックス”という高齢者専用の住居を建て、低家賃で提供。4㎡あたり月1バーツで、入居は30年契約となっている。
③不動産を担保に政府貯蓄銀行が生活費を支給。条件は、不動産ローンを完済し、その家に住んでいること。受給額は、年齢や資産価値などによって変動し、受け取りは一括や月払いを選択することが可能。不動産所有者が死亡すると、政府貯蓄銀行が不動産を転売する仕組みとなっている。
④15〜60歳の労働者を対象に、国民年金基金を義務化。これは義務退職積立金を支払っていない約1137万人の労働者向け。18年に実施予定。社員100人以上の企業は導入が義務付けられる。
一方、高齢者増加によって健康食品や医療器具業界などは右肩上がりが続いている。工業省工業振興局のパス局長は「健康食品や器具販売の15年の売上は約2380億バーツ。今後も年間3〜6%で成長していくだろう」とコメントした。
人口ボーナス期がすでに終わりを告げ、なだらかな成長期に突入したタイ。そして、すぐさま待ち受けているのは、低い出生率の改善や労働力の確保。山積する数多の課題を前に、政府の次なる一手に期待したい。