2016年、タイで4Gサービスの普及が本格化。新規参入組を交えた顧客獲得競争
12月19日、4日間に及ぶ攻防の末、携帯電話の第4世代(4G/900㎒帯)サービス向け電波の入札が終了した。勝者は、タイ携帯3大キャリアの一角、トゥルー・ムーブ・エイチ(TRUEMOVE H)と新規参入組のジャスモバイル。入札回数は199回に及び、譲らない通信各社の攻防で落札額は高騰。2社を合わせた落札金額は1519億5200万バーツに達した。11月に行われた1回目の4G(1800㎒帯)を競り落とした2社分の約809億バーツを加えれば、タイ政府に、約2330億バーツという臨時収入が入る。
入札前、大方が「今回も落札する」と予想した、最大手アドバンスト・インフォ・サービス(AIS)は準備した予算を超え、あえなく脱落。また、2回共に落札できずに終わった業界2番手のトータル・アクセス・コミュニケーション(DTAC)は、今後のサービス展開に課題を残す。同社は、すでに4Gサービスに使用する1800㎒帯を保有するが、18年で契約が切れる。現在、国家放送通信委員会(NBTC)に契約延長を求めているが、色よい返事はない。今回の入札で2枠を獲得したトゥルーは「5年後のマーケットシェアは、現在の20%から34%となり、業界2番手になるだろう」と余裕の会見を開いた。
一方、当初は「落札金額を支払えるのか?」と揶揄された新規参入を果たしたジャスモバイルだが、実は、通信業界ではお馴染みのジャスミン・インターナショナルの子会社。同社グループは、インターネットサービスプロバイダー「3BB」やテレビ局「MONO TV」を経営するタイ大企業だ。何より、同社グループを率いるピット社長は、「タイの株長者番付2015」で堂々の9位にランクインした資産家でもある。NBTCのターコーン委員長も「規模も経営状況も十分。むしろ、参入企業が増えて、競争原理が働けば、消費者に恩恵をもたらすだろう」と歓迎した。
AIS、DTAC、TRUE、ジャスモバイルの4社が出揃う形で、来年から4Gサービスの普及は本格化する。今後は利用者獲得に向けた、あの手この手のプロモーションを実施するだろうし、消費者にとってはうれしい限り。もっと、うれしい誤算だったのは、価格高騰で、大きなボーナスを受け取るタイ政府に間違いない。