成長率3.5〜4.5%へ。
カギは、輸出回復・インフラ投資の実施
「本日、ようやく政情不安から回復したと思います」
プラユット暫定首相は、2014年12月のBOI(投資促進委員会)主催の新投資奨励セミナーの席上で、こう高らかに宣言した。
昨年前半は政治混乱により、消費・投資マインドが低迷。GDP(国内総生産)成長率は当初予測(4〜5%)を大きく下回る1%前後に終わった。軍政下においても、これまでの政権方針を踏襲し、経済重視を掲げた施策が矢継ぎ早に打ち出された。
果たして、2015年のタイ経済は、同暫定首相の算段通りにいくのだろうか。
JETROバンコクの保住正保所長は、「昨年は第一四半期にマイナス成長に陥ったが、緩やかに回復している。民間消費は食品などの非耐久財を中心に回復傾向にあり、消費財の輸入も増えている」と話す。ほかにも、外国人観光客数がプラスに転じたことや、伸び悩んでいた世界経済の回復を背景に、輸出が持ち直した点もプラス要因に挙げられる。しかし、タイの主力産業「自動車」の国内販売の伸び悩み、家計債務の高止まり、農産品の国際価格の下落による農民所得の減少など、不安材料も多い。
その点について、プラユット暫定首相も頭を抱えているようだ。農産品価格の下落で苦しむ農家に対しては、現状、1ライ(1600㎡)あたり、1000バーツの給付金を支給している。だが、給付金の受け渡しの遅延が続き、農家から不満が噴出。暫定首相は「不正がないよう慎重に進めている」と話すに留まり、解決には至っていない。また、家計に直結する燃料やガス価格も「見直している」という。
目下、頼りの綱は、回復し始めた外国人観光需要だ。前述のセミナーでも、約2500万人(14年)まで減少した観光客が「15年は2700万人となるだろう」と期待する。あとは、内需拡大の切り札、高速鉄道などの巨大インフラ計画。12月19日、タイ軍政は中国との間で、鉄道整備事業の協力に関する覚書を締結。計画実施のホイッスルは鳴らされた。
2015年はどんな一年となるのか。政治の専門家ではない軍政が、どこまで奮闘するのか見極めたい。