NCPOが、消費税引き上げを決めた理由とは?
どうなる軽減税率の対象範囲
7月17日、タイ軍事政権「国家平和秩序維持評議会(NCPO)」のプラユット議長は付加価値税(VAT)、日本でいう消費税を2015年10月1日から、現状の7%から10%に引き上げることを発表した。
ただ、そもそもタイの法律では、VATが導入された1992年から税率は10%と定められている。ところが、当時、「10%は高すぎる」との経済界の反発を受け、導入直後から暫定税率として7%に引き下げられ、以後、1〜2年毎の見直しを経て、そのつど勅令で引き伸ばしてきた。
引き上げ決定の背景には、深刻な政府歳入不足が挙げられる。タイ財務省によると、2014年度予算当初から9ヵ月(13年10月〜14年6月末)の政府歳入が当初目標を6.6%(約1100億バーツ)下回る1兆5526億バーツと大幅に落ち込んでいるという。
これは、景気低迷で消費購買力の低下によるVATや輸入関税などからなる間接税収(目標に対して約15%未達)の減少、頼みの綱の自動車税も、自動車販売の低迷で目標に対して5割弱と落ち込み、法人税収も下がるといった実情が要因だ。加えて2011年から延々、引き伸ばされてきた軽油に課す間接税(1リットル当たり5.31バーツ)の免除による税収減、さらには社会問題とされる富裕層の不透明な所得税の支払いなど、税基盤の脆弱さが影響を及ぼしているという。
そうした、将来の税収不足による予算編成(国家運営)への危機感から、タイ財務省は、抜本的な税制改革計画をNCPOに提出。その第一弾として、今回のVAT引き上げに踏み切ったというわけだ。今後も、第2弾、3弾とタイ税制改革は続くとみられ、税制改革論者のなかには、固定資産税や相続税創設の実施を権限のある軍政下で進めるべきと主張する者もいる。
VAT引き上げに関しては、低所得者保護を目的に豚・鶏肉、米などの飲食料品を含まない軽減税率を適用する予定だとか。消費税は、日常生活に直結するだけに、否が応でも衆目の関心事。軽減税率の適用範囲も含め、動向を見守っていきたい。
【写真上】VAT10%への引き上げを決めたプラユットNCPO議長