プーケットの転覆事故から2カ月、その余波は
タイの観光・スポーツ省はこのほど、2018年上半期にタイを訪れた外国人観光客が1940万人となり、前年同期比で12%増加したと発表。そのうち590万人は中国人であり、同比26%増加となった。
この結果に、タイ政府が胸を撫で下ろしたことは言うまでもない。なぜなら今年7月、プーケット沖で中国人観光客を乗せた船の転覆事故を受け、同エリアでは7700室以上の中国人観光客によるホテルの客室キャンセルが発生。政府は中国人の“プーケット離れ”を強く懸念し、すぐさま現地の再発防止対策やウィーラサック観光大臣による視察を決行したが、下半期の中国人観光客の受け入れ目標を当初より約67万人少ない、515万人に引き下げるなど弱気な姿勢を見せていたが…そこから一転。上半期の数字により、年間の中国人観光客は初の1000万人に達するとの予想を同省は発表。事故の影響は最小限に抑えられたという判断だろう。
一方、同時期における中国人の海外旅行者数は昨年比を15%上回る7億1300万人と、その勢いは増すばかり。タイを訪れる外国人旅行者の約3人に1人が中国人という現状に、政府はその動向を注視したいところ。
中国のオンライン旅行大手「Ctrip」と観光研究院「China Tourism Academy (CTA)」が11日に発表したレポートによると、今年上半期に中国人観光客が訪れた海外ランキングで、タイが堂々の首位(以下、日本、ベトナム、韓国、シンガポール、インドネシア)となった。CTAのダイ代表取締役は、「これまでタイを訪れる中国人は買い物に興味があったが、最近は地方の文化を体験するなど新しい観光地に注目が集まっている」と言及。また、カスタマイズやローカルガイドによる個人ツアーといった新たな旅行スタイルも見られ、観光の多様化が進んでいるという。
タイの観光客増加はもちろん大歓迎。しかし、シミラン諸島やピピ島など、観光客過多による深刻な環境破壊が生じているだけに、数だけでなく、本質を求めた舵取りが必要だ。