伸び率4.8%。タイの景気好調は本物か?
釈迦に説法だが、その国の企業や国民がモノを作ったり買い物したりと、すべての経済活動を計算した数値がGDP(国内総生産)だ。 今年のタイはというと、第1四半期(1~3月)のGDP伸び率が前年同期比4.8%増と極めて好調に推移。これを踏まえ、タイ中銀は18年の同見通しを4.4%とし、今年3月時点の見通しの4.1%から引き上げた。また、タイの商工会議所、工業連盟、銀行協会の民間経済3団体で構成するJSCCIBも、同予測を従来の「前年比4.0~4.5%プラス」に据え置くことで一致。数値だけ見れば、タイ経済は上向きなことがわかる。
しかし一方で、国民からは「生活は変わらない」「景気の良さを実感できない」との声が挙がっている。
それもそのはず。前述した通り、GDPは“どのくらい生産したか”という数値が含まれるため、「今回の数値はあくまで在庫(生産)に回る製造品の影響です」と国家経済社会開発委員会事務局は補足する。その上で、「在庫(生産)として数えられる品目のうち、天然ゴムの市場価格が下落している影響により、スムーズに売れない可能性もある」と指摘。さらに、タイの社会状況について、家計債務が前年同期に比べて7.1%増えている。これは自動車ローン増が主な要因で、自動車の先食い需要に伴う将来の反動減の影響を懸念した。
その他、全人口の約4割が農業従事者であるタイでは、農業の雇用率が6%成長しているにも関わらず、生産者の収入が約12%も減少するのは、農産品の価値が下がっていることを意味し、つまり同事務局的には、伸び率だけを見て楽観視はできないということだろう。
とはいえ、農業以外の職業の平均収入は2.3%成長しているので、諸手を挙げて喜ぶことはできないものの“それなりに成長”はしている。だが、専門家からは少子高齢化による労働人口減や介護人口増による将来の社会保障費増の懸念も挙がる。脆弱な税体制が指摘されるタイ。景気が上向きな時こそ、増税で将来補てんを考えることも必要なのかもしれない 。