鼻息荒く、積極外遊と自国経済底上げへ強力に指示
数年に及ぶ経済停滞を乗り越え、景気回復の兆しを見せるタイ。経済担当のソムキット副首相は、この好機を逃すまいと積極外遊(投資呼び込み)行脚を図るとともに、財務省に対して、異例の檄を飛ばした。
投資呼び込み外遊では、6月27~29日に香港と深センを訪問。中国が進める「一帯一路構想」に対して「構想の未来は、タイにも大きく関わる」と持ち上げつつ、タイのインフラ整備事業や東部経済回廊(EEC)構想への投資を呼び掛けた。また、イギリスとフランスでは、現地の投資家らと意見交換し、「タイ経済は下半期からさらに上り調子となる。そのためにも民間投資が不可欠だ」と訴え、訪問後には、「彼らは、ASEANの中で最もタイに興味を示していた」と成果をアピール。さらに、これまで幾度と無く訪問し、蜜月ぶりを見せてきた日本に対しても、18日から三重県を訪問。鈴木英敬知事との面談のほか、県内企業と個別に面談し、国のみならず、地方行政レベルでの密接な関係構築にも乗り出す。
一方、タイ国内では6日に開かれた財務省幹部との会議で、「総選挙まで8カ月あまり、のんびり仕事をしている場合ではない。目標が達成できなければ、今年10月に職位が変わるかもしれないぞ」と異例の檄を飛ばしたという。加えて、国内経済の底上げに向けた経済施策の立案とともに、財政政策局が見通す「今年の経済成長率4.5%はまだ低い」と発破をかけ、さらなるプロジェクトを求めた。その他、低所得者支援、特に個人債務者のうち3000万人以上いると言われる農業生産者が、収入のほぼすべてを債務の返済に充てていると指摘。その上で、低所得者保護施策の立案を求めるなど、自ら陣頭指揮に立ち、各省庁に多くの経済政策を求めている。
過去には、中国の鄧小平氏が日本訪問を機に改革開放を進めることで、「眠れる獅子」を覚醒させ、今日の中国となった。今後のタイのさらなる発展を見届けたい。