ICONSIAM開業で、人と不動産の流れに変化
チャオプラヤー川西岸と聞けば、外国人には馴染みの薄いローカルエリアと考える人がほとんどだろう。しかし今、バンコクの“川向こう”の街並みが変遷期に差し掛かっている。
最大の要因は、今月10日にトンブリー地区のリバーサイドに誕生した「ICONSIAM」にある。国内最大プロジェクトとなる総工費540億バーツ(約1,856億円)を費やし、「サイアム髙島屋」も入居するこの大型複合商業施設の開業により、同地区では追随する不動産開発ラッシュの兆しが見られるのだ。
不動産コンサルティング会社「Modern Property Consultants」のワサンMDによると、「ICONSIAM」が建つジャルンナコン・ロード周辺にはもともとコンドミニアムやマンションなどの建設計画がなく、10年前の地価平均は1平方メートル当たり2万5,000バーツほどだったという。ところが、同プロジェクトが始動するとたちまち10万〜12万5,000バーツに上昇。現在では25万バーツにまで跳ね上がり、首都圏エリアと肩を並べる価格変動を呈している。
さらに、同地区がこれほどまで注目される理由は、新設・延伸工事が続く首都圏鉄道整備計画にもある。同プロジェクトは、サイアムパラゴンやサイアムセンターなどを運営する「Siampiwat」、不動産開発を行う「MQDC Magnolia」、そして大手財閥「チャロン・ポカパン(CPグループ)」の3社合同によるもの。3社から発表された開発計画によると、「ICONSIAM」最寄りのBTSクルン・トンブリー駅には、現在運行するBTSシーロム線に加え、2019年開業予定のモノレール「ゴールドライン」を整備。将来的には、「パープルライン」「レッドライン」といった新路線にも接続し、交通至便なロケーションになると言う。
新しい不動産や商業施設の開発、交通整備計画が進めば、街や人の流れも変化するのは至極当然。川沿いのホテルでは、観光客の大幅な増加も見込んでいるという。昔ながらの面影を残した同地区が、世界屈指のデスティネーションになることを期待したい。