その咳、大丈夫? バンコクで進む大気汚染
今年に入り、空を見上げると曇ったような霧がかかった日が多く、路上ではマスクを着けた人が増えた。これは朝靄ではない。PM2.5という、大気中に浮かぶ目に見えない粒径2.55マイクロメートル(1マイクロメートル=1mmの1000分の1)の非常に小さい粒子の濃度が高まったことで起こる大気汚染だ(専門家)。汚染指標であるAQI(0〜500)は、バンコクで151〜200(赤)と、健康に害を及ぼす域に達している。
保健省によれば、PM2.5は粒子が非常に小さいため、空気を吸い込んだ際に肺の奥深くまで入り込み、鼻水や目のかゆみといった症状のほか、気管支炎や喘息といった呼吸器系疾患、皮膚疾患、最悪は肺がんを引き起こす原因になるという。特に、花粉症や呼吸器系疾患を持つ人、子どもやお年寄りほど影響を受けやすい。
原因は想像に難くない。自動車の排気ガスをはじめ、道路工事、工場からの煙、ゴミや森林の野焼きなどによる粉塵で、しかも、乾季の今は、雨が降らず、風の吹かない日も多い。そのため、それらの煙や粉塵が滞留することで濃度が高まっているというわけだ。
防ぐには、外にいる時間を減らし、外出の際はマスク着用が必須だが、普通のマスクではPM2.5を防ぐことはできず、米国労働安全衛生研究所が定めるN95マスクや、日本が定める規格に基づく防塵マスク(DS1)でなければ効果はないという。
大気汚染を深刻と捉えたタイ政府も、N95マスクをチャトチャックやルンピニ公園などで、無料配布を開始したほか、14日には空軍が航空機(BT−67)2機を発進。上空からバンコク首都圏への水撒き、人工雨(Royal Rain)、ディーゼル車の規制といった対策を打ち出している。
一方で、すでにマスクの買い占めによる欠品や便乗詐欺といった混乱も起こっている様子。こうした時こそ、情報を見極め、冷静に行動するべきだろう。ともあれば「備えあれば憂いなし」であることも確かだ。