台頭する人工知能が35%の仕事を奪う?
世界的に高まる人工知能(AI)の機運が、産業は言わずもがな、社会の構図までも変えつつある。自動車産業や食品業界といった製造業を中心にタイ国内でもオートメーション化が進むが、現状は全体の5%に留まる。 ところが、マイクロソフトタイランド社はこのほど、将来的には全職種の35%をAIが代替できるとの調査結果を発表。同社のタナワットMDによると、AI導入が作業の効率化を促進し、企業の組織体制に新たな変化をもたらすという。言い換えれば、クリエイティブな分野や組織マネジメントなど人間にしか賄えない部署に人員を集中させることで、仕事の在り方や労働者の意識が改革される。
ただし、「すべての仕事をAIに奪われるわけではなく、人間にしかできない新たな職域も生まれる」と、同MD。具体的な職業についての明言こそないが、ロボットと人間の協働を管理するAI事業責任者や、サイバーセキュリティアナリストなどが挙げられるだろう。
閑話休題。経済を振り返ると、日本はこれまでに3度のAIブームを経験している。1度目は1950年代後半、2度目は80年代に起こり、とりわけ後者は盛り上がりをみせた。当時の通商産業省は82年より550億円もの費用を投じ、「第5世代コンピュータ」の開発計画に着手。しかし、実を結ばないまま92年に終結を迎えた。当時はインターネットが普及しておらず、ビッグデータの収集が困難だったことが要因とされるが、日本企業ならではのボトムアップ型の体質も問題視されている。
スポーツと同様、AI時代には若い世代の柔軟な発想や行動力が必要不可欠だ。19歳の若さで起業したマイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツ氏を筆頭に、スティーブ・ジョブズ氏やラリー・ペイジ氏など名立たる経営者が20代で起業。時代に新風を吹き込む意思決定をしてきたことが、何よりもの証明だ。
日本に比べると、トップダウン型の企業が多いと言われるタイのビジネス市場。AIとの共生により、国民にとって価値ある豊かな未来がもたらされることを願って止まない。