タイ進出21年目の「スタバ」が勢力拡大の予感
経済の成長と共に、緩やかに発展を続けるタイのコーヒー文化。巷には趣向を凝らしたカフェが続々と登場し、現在はアジア第6位のコーヒー生産国へと成長を遂げた。
そんな中、タイの飲料業界最大手「タイ・ビバレッジ(THBVE)」傘下の飲料メーカー「コーヒーコンセプツ・タイランド」が、米国生まれのコーヒーチェーン「スターバックス」の経営権を総額157億バーツ(約540億円)で買い取ると発表した。同メーカーは、同じくTHBVE傘下のシンガポール企業「フレイザー&ニーブ(F&N)」と、香港やマカオ、ベトナムなど各国でスターバックスの独占事業ライセンスを保有する香港の「マキシムズ・ケータラーズ」の2社が共同出資した合弁会社。地元紙によると、F&Nはもともと牛乳やホイップクリームといった商材をスターバックスに供給するサプライヤーの一つで、今回の買収によりさらに関連業務を拡大させたい考えだという。また、THBVEの親会社である「TCCグループ」は、「ゲートウェイ・エカマイ」「アジアティーク・ザ・リバーフロント」といった人気の商業施設を運営する他、コンドミニアムなどの不動産事業も手掛ける国内屈指の巨大財閥。その潤沢なビジネス基盤を活用し、一層店舗網を広げていくと見られる。
一方、米スターバックスは近年、経営権の売却など合理化を加速している。ケビン・ジョンソンCEOは「今後はより大きなビジネス効果を期待できる中国市場に注力する。本社の負担を減らし、同市場に一極集中するためにも取捨選択は欠かせない」と語り、2018年には欧州4カ国の経営権を手放している。
1998年に初上陸したスターバックスは、現在タイ全土に370店舗以上を展開。ローカルの「カフェ・アマゾン(約2510店舗)」「インタニン(約500店舗)」に次いで、国内第3位の事業規模を誇る。進出当時、外食での飲み物と言えば甘ったるいタイティーやアイスコーヒーが主流だったタイに新たなコーヒー文化を開花させ、ブームを牽引するスターバックス。今後の動向にも期待したい。