プラユット政権発足へ

大連立で不安定な足元 山積する課題に挑む

11日、ワチラロンコン国王の承認を受け、プラユット氏が正式に第30代首相に就いた。タイが抱える課題は米中貿易戦争、少子高齢化、最低賃金問題と枚挙に暇がなく、今後政権がどう対応するかに関心が集まる。

注目は、2017年から実施している「福祉カード」政策の今後。年収10万バーツ以下の低所得層1450万人へ、一律500バーツを給付する他、65歳以上を対象に通院費補助として1,000バーツを支給する制度だ。問題は年間400〜500億バーツという多額の税金を財源としている点で、SNS上では中・高所得者層から批判が噴出している。そんな中、プラユット首相は11日、「福祉カードは継続し、支給人数と額を拡大する」と宣言。中間層以上の不満はますます強まりそうだ。

米中貿易戦争も懸念材料だ。今年の輸出総額は前年より55〜67億ドル減少すると予想されている。また、国内総生産(GDP)の1割を占めると言われる観光収入へのてこ入れも重要。貿易戦争の渦中にある中国人観光客以外に、台湾、日本、インド、香港などからの観光客を誘導する方針だ。

一方、国民国家の力党は①最低賃金を1日当たり400~425バーツに増加、②大卒初任給を最低2万バーツに引き上げ、③オンライン販売業者の徴税を2年間免除④所得税を10%減少、⑤高齢者向け給付金を現行の毎月600バーツから1000バーツに増やし、定年を63歳まで延長、⑥少子化対策として妊婦に助成金を毎月支給、などのマニフェストを発表。日系企業にとっては、最低賃金の値上げは人件費の増加につながるため、注目度が高い。

今回、首相指名選挙で上下院750議員のうち、500票を集め圧勝したプラユット首相。しかし、今回の政権は19党の大連立のもと成り立っており、協力政党との関係がこじれれば政権運営の停滞もあり得る。まずは、23日にバンコクで開かれるASEAN首脳会議。民政移管後最初の大仕事をどうこなすか、プラユット首相の手腕が試される。

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