タイ各地に寄付を届ける タンブン・自転車ツーリング

「現世で徳を積む(タンブンする)と、来世でいいことが起きる」。
そんな仏教観が根付くタイでDaawさんが出逢ったのが、タンブンを目的と
した自転車ツーリング。開始から3年。新たに見えて来たタイの姿とは。

藁の束(プム)を荷台に装備し、同じユニフォームを着て走る自転車集団を見たことはありますか? これが、Daaw(タイでの愛称・ダーウ)さんが2016年から本格的に始めた「タンブンを目的とした自転車ツーリング(以下タンブン・ツーリング)」。タイには古くから根付く活動の一つであり、毎週のようにさまざまなサイクリストが企画したイベントが開かれています。短いものは数日、長いものは数カ月。多い時には100人以上が集まり、道行く人から寄付を受けながら走行し、集まった寄付金をその目的地である寺院や学校、病院へ届けています。

「走行距離を1日100km前後に設定し、タンブンを受けるために止まりながら進んでいるんですが、車を停めてわざわざ寄付してくれたり、市場など忙しくてお寺に直接届けられない人たちがたくさん集まってくれたり。大晦日には1日約50万B集まったこともありました」。

そう話すDaawさんは自転車旅で日本各地を走り、海外ツーリングも経験。2008年に旦那さんの仕事のため来タイし、自らも勤務。退職を経て、時間を有効に使いたいとタンブン・ツーリングに本格的に参加するように。今ではほぼ毎月、タイ各地を走っています。

メンバーはDaawさん以外ほぼタイ人。当初、タイ語だけでの会話や集団で走ることに不安もありましたが、言葉の壁を感じさせないアットホームな空気にすんなりと合流。ただし、事前に予定が決まっていないのは日常茶飯事で、当日になっても宿泊先は未定なことも。予想外の出来事の連続に戸惑っていたDaawさんですが、最終的には“なんとかする”タイ人の機転や何事にも動じない寛容さを再確認し、「自分の価値観をいい意味で壊してもらってます」と笑います。

道中では現地の協力者に食事や宿泊スペースを提供してもらい、テントを張って寝ます

『何もしなくていい』
タンブンの本質を教わった

そうしてツーリングを重ねながら、日本人にはなかなか想像しがたいタンブンの在り方を、Daawさんは肌で感じてきました。「当初、私は寄付を募るために現地で声がけや働きかけをすると思っていたんですが、メンバーは自転車を停めて静かに待つだけ。疑問に思って尋ねると、『タンブンをしたい人は自然と来るから。私たちは待つだけでいい』って。タンブンは他者から強いるのではなく、自分の考えを元に行動するもの。してもいいし、しなくてもいい。これがタイ人の日常に根づく考え方なんだと目から鱗でした」。

それは周囲の目を気にし、「〜をしなきゃいけない」という思考に陥りがちな日本人、そして自身の考え方を顧みるきっかけにもなったのだそう。

現在、Daawさんはタイ国内77県のうち71県を訪問(2019年6月時点)。これまでは参加するだけでしたが、今後は自分のイベントを立ち上げたいと計画中。自ら企画することで、もう一歩タイに踏み込みたいのだと口にします。

「タンブン・ツーリングには、3つの『ありがとう』が存在します。タンブンをする側の『届けてくれてありがとう』、寺院や学校といった受け取る側の『寄付してくれてありがとう』、そして私たちの『協力してくれてありがとう』———その感謝の連鎖が、とても気持ちいいんです」。

自転車が好き、旅行が好き、その延長線上で喜んでくれる人がいる。タンブン・ツーリングはDaawさんにとって“一石三鳥”。気負わず軽やかに、次の目的地へ向かいます。


PROFILE
Daaw
ダーウ
1969年生まれ、大阪出身。本名は相場かおり。タイでのニックネームがDaaw。自転車歴22年。日本国内を走ると共に、タイやスペイン、ネパールの海外ツーリングも経験。2008年、旦那さんの駐在に伴い来タイ。16年から本格的にタンブン・ツーリングに参加。愛用の自転車はGIANTのHard Line 8200。


Daaw☆Thaiタイで出会ったツーリング
Daawのタンブン記録は
ブログ・FBで発信中!
自転車ツーリング経験がある人もない人も、旅の記録とタイ各地の景色に興味が湧くこと必至! タイ国内の個人ツーリングや輪行など問い合わせはメッセージで。
[問い合わせ]
Website:https://daawchari.exblog.jp
Facebook:Kaori.Daaw


編集部より
「せっかくタイにいるんだから」とタイ人コミュニティに飛び込み、大好きなツーリングに時間を注ぐようになったDaawさん。その表情には、自分らしいタイの楽しみ方を見つけた充実感が溢れていました


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