5年ぶり民政移管

大連立政権の課題は、公約をどこまで果たせるか

総選挙から約4カ月。プラユット内閣が16日、ワチラロンコン国王の前での宣誓式を経て発足した。振り返れば、「バンコクシャットダウン」と題した2014年の反政府デモに始まり、その後、実施された総選挙は憲法裁判所の判断で無効に。泥沼化する中、同年5月にクーデターが発生し、当時の陸軍司令官だったプラユット氏が暫定首相に就任した。軍事政権からの民政移管は、実に5年ぶり。クーデター後から続いた軍事政権の最高機関「国家平和秩序評議会(NCPO)」も解散したが、首相をはじめ多くの閣僚は留任し、良いか悪いかはさておき、暫定政権を引き継ぐ形での船出となった。

新政権は、下院総選挙で第2党となった親軍政党の「国民国家の力党」を中心とする19党による大連立。重要法案を審議する下院議員(定数500)は、与党254議席、それに対して野党は246議席と僅差。まさに綱渡りな政権運営を強いられることになるだろう。仮に与党5人が造反すれば、内閣不信任案を可決されかねない。

とはいえ、「民政移管」されたことは事実で、国際的な信頼を得る上で、まずは一安心といった様子だろう。地元メディアによると、国王は新政権の閣僚に対し、「国の治安のために、情熱を持って公正な仕事をしてほしい」とのお言葉を伝えたという。

今後、新政府は所信表明、つまりは政策声明を出さなくてはならないそうで、同日開かれた初閣議では政策声明に関する閣僚らの意見を聞き、承認された。

注目されるのが「タイ誇り党」が提案した「医療大麻の合法化」だ。識者によれば「同党のアヌティン党首が保健大臣に就くため、同法案は確実だろう」とのこと。また「国民国家の力党」のマニフェストにある最低賃金400バーツ(1日)への引き上げについては、日系企業を含め経済団体からの慎重論をどこまで聞き入れるかが注目される。いずれにせよ、不安含みの新政府。果たしてどのような政権運営がなされるのだろうか。

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