「タイ高齢化を日系企業の追い風に」
《プロフィール》
バンコク駐在員事務所長
近藤 桂司
こんどう けいし
■1974年生まれ、広島県出身。明治大学卒業後、1998年4月入行。広島県を中心に6支店で営業を経験し、2018年6月より現職。
■座右の銘:人間万事塞翁が馬
■尊敬する人物:両親
■愛読書:ビジネス書
■趣味:ゴルフ、剣道、旅行
■休日の過ごし方:ゴルフ、ジム、旅行
■バンコクの行きつけ店:ぼっけえ、Zola Snack Bar、きっちん新潟
海外赴任を希望されたそうですね
タイの駐在が決まった時は、端的に嬉しかったです。もともと、赴任する前の約20年間は営業として主に中国地方の企業を回っていたんですが、その中に海外進出している企業がいくつかあったんですね。海外での活動が話題に出ることも度々あったのですが、当時は私にとって、あくまでトピックの一つとの認識でした。
考え方が変わったのは、5年前の社内のベトナム視察ツアーに参加してからですね。ベトナムの現地企業を見学したのですが、私の想像以上にアジアが発展していたのに驚きました。「やはり自分の目で見てみないとわからない」と実感したものです。ツアー後は、ベトナムへ進出している企業と話が盛り上がりましたね。具体的な地名や状況がわかるので、会話が楽しいんです。同時に、「知っているのと知らないのではかなり差がある」と感じ、それから海外志向が強くなっていきました。
駐在員事務所での業務は
タイでは主にビジネスマッチングや海外進出支援、タイ国内でのサポートなどを行っています。近年は特に、M&Aの案件発掘に注力していますね。実は現在、株式譲渡を検討している企業がタイで増えています。タイで高齢化が進んでおり、引退を検討する企業トップが増えているためです。事業の選択と集中を進めている会社も多く、株式の売り先を探す企業が目立ちます。
この状況は、これからタイへ進出しようとする日系企業にとって追い風となるでしょう。安定した物流網を保有し、歴史のあるタイ現地企業を買収すれば、スムーズにタイへ進出できると期待されるからです。
通常、海外で事業を軌道に乗せるためには相当の費用や労力、時間が必要になります。地の利を持たない日系企業が現地スタッフの雇用や教育、取引先基盤の強化といった課題に取り組むのは大変なことでしょう。市場成熟がある程度進んでいるタイへの参入とあらば、なおのことです。
個人的な見解では、タイの少子高齢化に即したビジネスの展開に期待していますね。例を挙げるなら、健康、医療、介護、その他サービス業などです。何がタイで必要とされるかをキャッチするため、日頃からアンテナを張るよう心がけています。
ただ、一番大事なのは、お客さまと直接話し、現場や商品を見ることで、求められるものは何なのかを理解することです。我々は多種多様な業種の方と接点を持っているのが最大の強みなので、シナジー効果を生む企業同士をマッチングさせられるよう、日々勉強に励みたいですね。
他のASEAN地域も管轄されているのだとか
事務所を開設して今年で4年目になりますが、現在タイに150社、ベトナムに90社、カンボジアに20社、ミャンマーに20社、ラオスに2社のクライアントがおります。
よく製造業はタイ進出が一服し、ベトナム進出を検討する会社が増えていると聞きますが、タイほどサプライチェーンが整っておらず、結局、原料調達などの面で他国に依存せざるを得ない状況のようです。逆に、そういった課題がビジネスチャンスにつながると思います。各国の足りないものを補完し、それがビジネスになる、という流れが望ましいですね。
他行との繋がりも重視してますね
そうですね。当行だけでビジネスマッチングさせるには限界があるので、プラットフォーム事業を行うJETROが中心となり、タイに進出している地銀約20行のリソースを活用し合う協力体制を整えています。直近では5月に各地銀が合同でビジネス交流会を開き、日系中小企業の支援に当たりました。
日本で活動すると、どうしても地域限定の規模になってしまいますが、タイでは「オールジャパン」のスケールで事業を行うことができます。その分、より多くの発想力と提案力が必要と痛感しているところです。この1年はお客さまから教えて頂くことばかりでしたが、今後はこちらから提案していければと思います。4人のスタッフでタイ進出企業を全力でサポートする