国際人権団体、「表現の自由」侵害に危機感
デジタル経済社会省のプティポン大臣は8日、無線LANサービスを提供する全国のカフェや飲食店に、来店者のネット閲覧履歴を90日間分保存し、政府に送るよう指示した。
そのデータは、8月末に設立された「フェイクニュース対策センター」が管理し、嘘の情報を発信した者を追跡するという。
同省は「フェイクニュースの防止」を目的に掲げるが、国際人権団体 「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のタイ代表が「どんな内容がフェイクとされるかは曖昧。
政府が反対意見を封殺したり、都合の悪い情報を隠したりする可能性がある」と懸念する。
同センターは関連機関の協力の下、インターネットやソーシャルメディア上のニュースを監視する組織。
フェイクニュースがあれば、同省のウェブサイトやライン公式アカウントを通じて、国民に通知する。
関連機関は“正しい”情報を提供する必要があり、最終的に政府が“正しい”と判断した情報を公開するという。
プティポン大臣は「個人情報を悪用することはなく、あくまでインターネット上のプラットフォームを介した不正行為防止のための措置」と念を押す。
なお、同センターの設立に先立ち、国立開発行政研究院(NIDA)の世論調査機関「NIDAポール」は8月14〜16日、全国15歳以上の1522人にフェイクニュースに関する調査を実施。
それによると、「ネット上のフェイクニュースを信じたことがあるか」との質問に対し、「信じたことがない」との回答が61.23%を占めた一方、「信じたことがある」が27.59%、「偽の情報か判別できない」が11.18%だった。
4割がフェイクニュースの影響を受けているということになる。
また、「同センターの設立に賛成か」という質問には、86.98%が「賛成」と答えた。
どうやら国民のお墨付きの上で同センターが設立したようだ。
ただ、海外投資家の目に今回のネット検閲がどのように映るか。
仮に、民主主義の根幹をなす「表現の自由」を侵害していると判断されれば、投資熱は冷え込むだろう。