東部開発が景気回復への狼煙となるか……。
景気低迷なんのその。今年のタイは、東部経済回廊(EEC)のさらなる発展が経済を下支えするという。
巷では、長引く米中貿易戦争やバーツ高の影響を受けた輸出や観光産業の不振から「2020年の経済は低迷するだろう」との見方がもっぱらだ。そんな暗い話題が先行する中、タイ工業団地公社(IEAT)は、タイ政府が経済成長の柱に掲げるEECにとって「今年は最も繁栄する時期になるだろう」との明るい話題を振りまいてくれている。
ご存じの通り、EECとはチョンブリー、チャチューンサオ、ラヨーンの3県において、タイの産業高度化のためのインフラ整備や高付加価値産業の誘致などを進める一大国家プロジェクトのこと。IEATによれば、開発当初から現在に至るまでのEECへの投資は好調で、2019年には域内31の工業団地内の新規申請が73社、投資額239億B、開発面積は1964ライ(1ライ=1600㎡)と前年比98%増となった。すでに、稼働を開始した工場は183棟(投資額3,230億B)に上るという。
昨年、輸出不振の影響で多くの工場が閉鎖あるいは生産ラインを停止し、約4万人が失業したことが話題となった。
逆に、EEC域内で稼働開始した工場では、約3万人が新たに雇用されたという。
IEATのソムジン総裁は「外的要因により苦しい判断を余儀なくされた企業もあるが、未来あるEECには投資が集中している」と話す。実際、域内への投資申請や検討する企業は留まることがなく、タイ政府もタイ投資委員会(BOI)と連携して、法人税の免除や高度人材への在留資格の緩和など、あの手この手を使い支援する。また、外資のみならずローカル企業を見ても、19年のタイ証券取引所で実施された新規株式公開(IPO)では大型上場が続き、東南アジア諸国連合(ASEAN)で6年連続のトップのIPO市場となるなど、タイ企業の成長は増すばかりだ。
確かに、20年の経済動向についてはマイナス要因が多い。
とはいえ、景気回復への狼煙も上がりつつあるようだ。