「タイは、海外で最も有望な市場」
《プロフィール》
代表取締役
湖中 謙介
こなか けんすけ
■大阪府大阪市出身。1982年コナカ入社。99年常務取締役、2003年専務取締役、05年代表取締役社長
■趣味:航空観戦、カメラ
■バンコクで良く行くお店:肉山バンコク(レインヒル)
■愛車:クラウン
タイ進出8年となりました
当初の計画から、「SUIT SELECT(スーツセレクト)」を進出から3年で10店舗展開を目指していました。目標を達成した後に、市場の適正化を図ったことで、現在は8店舗での展開です。現在は、バンコク中心部にある巨大ショッピングモール・セントラルワールド店を基幹として、8年で得たノウハウを活用しながら、改めて、出店計画を立てています。実は、タイ進出と同時に中国やシンガポールへも進出を図ったのですが、今ではタイだけに絞っています。
スーツを着用する文化は、いかがでしょう
計画では、金融を中心に経済発展を遂げ、1人当たりの所得が高いシンガポールは、市場としても価値が高いと踏んでいました。ところが、いざ出店してみると、スーツ文化が思ったほど浸透していなかったのです。ワイシャツで例えるとわかりやすいのですが、シンガポールでは半袖のワイシャツが多く売れました。
つまり、暑さゆえにジャケットを羽織らないビジネスパーソンが多かったのです。逆にタイでは、半袖ワイシャツは全く売れず、デッドストックに悩んだほどで、多くのビジネスパーソンがスーツをしっかりと着こなしていました。これは、全くの誤算でした。洋服に対する意識が全く異なっていました。タイでは、スーツに対して生地や形といったディテールに強いこだわりを持っている人が多く、しかも、TPOに合わせてスーツを着こなしています。
タイでは、日常的にパーティースタイルを楽しむ人が多いですね
おっしゃる通りです。タイでは、事あるごとにセレモニーやパーティーを開く文化があり、出席する多くの人がタキシードやドレスを気軽に着こなしているんです。
つまり、中流階級以上の多くの方々が、TPOに合わせて、ブラックスーツやタキシードを着用するマナーを心得ているわけです。着慣れているからこそ、ビジネスシーンでも素材やデザインなど、「よりスーツらしさ」にこだわる人が多いんです。その証拠に、日本でタキシードといえば1カ月に1着売れる程度ですが、タイでは1日1着に近い頻度で売れるんです。中には、タキシードのバリエーションを楽しむ方もいるほどです。まさに嬉しい誤算でした。
そこで、今後のタイ市場については、第2フェーズと位置づけ、ニーズを裏切らない商品構成や出店攻勢を検討しています。進出時から現在に至っては、セントラルグループの店内出店がほとんどでしたが、将来的には、路面店といった単独店も視野に展開していこうと思っています。タイというスーツやタキシードのリテラシーの高い好市場を中心に、同じく発展を続ける隣国への展開も今後の視野に入れています。
ミャンマーには工場があると
タイとミャンマーを合わせた人口は、1億3000万人にもなります。すでにミャンマーの工場には、最新の縫製機械を導入し、オートメーション化を図っています。仕立ての機械化により、日本ではオーダーメイドのスーツが伸びています。少し前に全体の5%だった需要は25%まで拡大。
これは、オーダーメイドのスーツが買い求めやすい価格で提供できるようになったからですね。タイに置き換えると、タイで(オーダーメイド)注文をとりミャンマー工場で仕立てる流れも今後はできると考えています。スーツ文化が浸透しているからこそ、もっと、お手頃な価格でオーダーメイドスーツの提供を目指します。
タイには日本人も多く住んでいます
最近では若い駐在員の方も増えているそうです。スーツセレクトのターゲット層は20〜40代です。
今後は、日本で流行のエフォートレス(快適)な商品開発にも力を入れると共に、パーティー需要の高いタイ人のセンスを取り入れたスーツも増えていくかと思います。せっかくの海外駐在です。時には、タイならではのセレモニーやパーティースタイルに着飾って、出席しても良いのではないでしょうか。