在タイ米国大使館も心配する600万人支持者の行方
タイ憲法裁判所は2月21日、野党第2党「新未来党」に対し、違法行為があったとして解党を命じるとともに、タナトーン党首やピヤビット幹事長ら幹部16人の向こう10年間の政治活動を禁止した。
新未来党は昨年3月に実施された総選挙で600万票を獲得。
特に若者から多く支持され、当時の反軍政派の急先鋒として躍進した。
憲法裁によると、同党の結党時に、同党首が私的資産から1億9,120万バーツを活動資金として融資。
これが違法だとして、選挙管理委員会が昨年12月に解党を申し立て、今回の処分に至った。
判決を受け、同党首は支持者に対して「約束を果たせず申し訳ない」と謝罪した。
一方で、プラユット首相は自身のFacebookに「憲法裁の判断に満足している。
新未来党の支持者は別の方法で政権を監視してください」と書き込んだ。
しかし、事態はあらぬ方向へ。
前述の通り、同党支持者の多くは若年層。
若者の熱い気持ちは政治集会という形で爆発し、タイ国内の各大学構内で相次いで集会が開かれ始めたのだ。
集まった若者らは、憲法裁の判決を不当だと抗議の声を挙げ、インターネット上では政治集会を呼びかける情報が飛び交っている。
ついには在タイ日本国大使館が「留学生、在留邦人及び旅行者は、不測の事態に巻き込まれることのないよう、政治集会の開催場所周辺に不用意に立ち寄らず、安全確保に十分な注意を払ってほしい」と注意を促す他、在タイ米国大使館も「600万人という多くの支持者の権利が奪われ心配だ」との声明を出す事態に。
タイは、昨年の総選挙を経て5年ぶりの民政復帰を果たし、国際社会にアピールしてきただけに、少しばかり残念な結果となった。
違法行為を罰することは致し方ないが、今年は、新型コロナウイルスや世界経済低迷の影響で、景気の先行きが暗い。
だからこそ、今は国民が一致団結して乗り越えられるよう先導するのが“政治”ではないだろうか。