3000年前の洞窟壁画が残るヤラー山。 政府による保護の一部解除に周辺住民は抗議…
南部ヤラー県のヤラー山が今、文化的価値か経済的価値のどちらを優先させるかで揺れている。山には3000年前に描かれたとみられる洞窟壁画が4カ所ある他、古代の陶器も出土されており、政府は重要文化財として一部を保護してきた。
しかし2月26日、芸術局は保護対象を約142万㎡から約112万㎡に減らすと発表。
山から天然鉱石を採掘し、政府はこれを活用することで工業用鉱石の不足問題を解決したい考えだ。
これに猛反発したのが、地元住民と研究者で設立された「ヤラー山を守る会」。
同会のワラー代表らは3月5日、文化省の前で抗議デモを実施し、保護対象削減を撤回するよう迫った。
ワラー氏は「この山はタイ南部にとって、現存する唯一の遺跡である可能性が高い。
にも関わらず、工業的利益ばかり見て我々住民の声をまったく聞いていない」と指摘。
また、採石の際に洞窟壁画が損壊する危険性に言及し、生態系や天然水で農業を営む地域住民の生活にも大きな影響を与えると主張した。
一方、同局のプラティーブ局長は経済的な理由で保護対象の削減を決めたと釈明。
続けて、「今回の措置で壁画に影響が出るとは考えにくい」との見方を示している。
文化的価値は往々にして評価が難しく、採石場による壁画への影響も不明なため、議論は今後も平行線を辿るだろう。
ただ、目先の経済的価値を追って、人類の宝たる歴史を葬ることだけは避けたいところだ。