2025年までに、エコカーの世界生産ハブへ
米中貿易摩擦や自動車ローン引き締めの煽りを受け、昨年のタイの自動車生産台数はマイナスに転じた。
しかし自動車産業の高度化を推し進めるタイ政府は、自動車メーカーに対し税制優遇などの恩典を付与。
トヨタ自動車が今年1月、2023年までに電気自動車のタイ国内での生産開始を発表するなど、着実に次のステージへと歩み出している。
またタイ政府は去る2月に、官民一体の「国家電気自動車政策委員会」を発足。
プラユット首相を筆頭に、副首相や工業省大臣、エネルギー省大臣、運輸省大臣などが名を連ね、大手自動車メーカーなども参加する肝いりのプロジェクトを立ち上げた。さらに、3月11日に行われた同委員会の対策会議の中で、5年以内に「電気自動車(EV)」「ハイブリッド電気自動車(HEV)」「プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)」といった次世代車「xEV」の世界的な生産拠点を目指す構想についても言及。
具体的には、22年までに公用車や公共交通機関を中心に6〜11万台を導入。
その後、30年までに75万台の普及を見込んでいるという。
陸運局の調べによると、昨年タイで新規登録されたEV数は前年比380%増の1572台。
HEVやPHEVもすでに通算15万3000台以上が販売され、09年の国内販売の開始以来、右肩上がりの成長線を描いている。
そこで当面の課題とされるのが、充電インフラの整備、車載バッテリーなど導入コスト問題、車種の選択肢の少なさなどだ。
現在、EV車の公的な充電スタンドは全国で520カ所ほどに留まっていることから、一部の自動車メーカーからは5年以内の目標到達は非現実的との声も寄せられ、xEV普及を急ぎたい政府との温度差が生じていると言える。
一方で政府は、10年落ちの中古車からEV車の買い替えに際し、1台につき10万Bを補助するなど、国民の購買意欲を刺激する対策を検討中。
“タイはEV市場の有望株”との国際的な見方もあり、この大転換期にどんな舵取りをするのか。
その動向が注目されている。