人々の豊かな暮らしを目指し始めた地域開発。 リゾート化が進む山岳民族の村の行く末は…。
古都チェンマイ中心部から北西へ50km。標高1350mの山肌に、タイで一度は訪れたい景勝地・モンチェムがある。
山岳民族が暮らす辺り一帯ではかつてケシ栽培が行われていたが、年間を通じて涼しくイチゴや高原野菜の生産に適していることから、1984年に王室プロジェクトが始動。
農民支援を目的に観光農業を推進する一方、雲海や棚田が造る絶景、モン族の暮らしをひと目見ようと、多くの旅行者が訪れる名所になった。
しかし、土地開発の“光と影”とでも言うべきか…。
観光地化が進むにつれ、2002年頃から旅行者の受け入れ施設の建設が本格化。
中には無許可で森林を切り拓いて土地の所有権を外国人投資家へ転売したり、違法なリゾート施設を建てるといったコミュニティの秩序を破る集落住民も現れた。
とりわけ森林保護区内への設営は国有林法や建築規制法に当たることから森林局は今年1月、違法事業者29人・計149物件を摘発。
同県の裁判所が建物の取り壊しを命じ、可能な限りの景観の復元を図る方針を明らかにした。
チェンマイ県森林資源管理事務所は今月10日、ようやく第一弾としてホテルなどを経営していた事業主が所有する8つの物件の解体に着手。
今後すべての土地を森林局が没収し、緑地化を進める予定だという。
ワラウット天然資源・環境大臣はこれを機に“地域農業の活性化”という名の原点回帰を呼び掛けるが、一度甘い蜜を吸った住民らの反応は…。
軌道修正はそう容易くはない。