市民を悩ます大雨による洪水。 水の流れを制御しながら災害防止へ
毎年、雨季になるとバンコクとその周辺エリアにおける道路冠水が、まるで風物詩のようになっている。しかし、これが単なる道路冠水に留まらず、洪水という災害に及んでしまうことがある。
大洪水が起きる周期は10年、20年とも言われているが、2011年には甚大な被害をもたらしたことから、政府機関が協力し合い洪水問題に正面から取り組み始めた。
洪水防止ための基本原則を決め、対策を打っていくというわけである。
そこでは、タイ北部などで生じた水がバンコクに流れ込まないようにしつつ、都心部エリアに降った雨による水を効率よく川へ排出する考え方が軸となっている。
さて、バンコク都内で起きる洪水の大きな原因は2つあるとされている。
1つ目はゴミが排水溝を詰まらせてしまうこと。
都内で1日に排出されるゴミの量は約1万トン以上あるといい、その中できちんと処理されなかったゴミが川や運河に流れて排水溝を詰まらせてしまう。
2つ目は大雨による土砂の流出。
標高が低くすり鉢のような地形のバンコクには、流れ込んだ水が土砂と共に溜まってしまい、水が川へ排出されにくい環境となってしまっている。
そこで近年、バンコクでは排水溝の徹底的な清掃や排水ポンプの増設と共に、大掛かりな排水システム技術を取り入れているという。
1秒あたり195㎥の水をチャオプラヤー川へ送る巨大な排水トンネルがその1つ。
都内の地下に直径3.4〜5mのトンネルが合計約20kmに渡り造られている。
さらに洪水ポイントの地下には巨大な貯水槽も埋設されている。
そして2019年から導入されたのが、スクンビット通りなど都内14カ所の大通り直下に建設された排水システムだ。
直径1.5〜2mの排水溝が、雨による大量の水を川へ効率よく運び出す仕組みになっている。
先だって10月2日にバンコク都内の広範囲でひどい道路冠水が起きたが、バンコク都によると、かつては水が引くまで約6時間かかっていたところが現在は約2時間。
政府は排水システム技術をさらに進化させながら、洪水被害のないバンコクを目指していきたいという。