タイを飲み込む高齢化の波

高齢化社会に突入して久しいタイ。 そこで打たれる政策とはいかに

日本では高齢化社会というキーワードがメディアを賑わすようになってだいぶ経つが、タイにおいても同じ問題が浮上してきて久しい。

タイは2005年から高齢化社会に入ったとされ、タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)が公表している満60歳以上の人口は、16年時点では993万人。

ASEAN諸国の中ではシンガポールに次いで高齢者人口が多い。

それが今年1月の調査では1200万人にまで増加している。

さらにNESDCは、35年には総人口の約30%が高齢者となり、タイは「スーパー高齢化社会」になるとしている。

また、少子化傾向も進行していて、若年世代が老齢世代を支えるという従来の形に無理が生じてきている。

さて、タイ政府もこのような状況をただ見ているわけではない。

昨年、発表された「高齢者の生活水準開発企画」には、老後を見据えた準備のための意識を高め、貯蓄を奨励するとともに、高齢者を対象とした雇用環境の創出などの施策が織り込まれている。

少子化も同時に進む中、特に高齢者の雇用は労働力確保のためにも重要になってくる。

総人口が伸び悩むことは、一国の経済活動に少なからずともダメージを与える。

これは世界中で共通の問題でもある。

そこで労働省ではこの8月に、率先して高齢者を対象とした働き手を募り、1,500人規模の巡視員、清掃夫などといった仕事を創出している。

また、このような高齢化社会を見据えたビジネスも成長過程にある。

10月15〜17日に開催されたイベント「InterCare Asia 2020」では、保健省が「タイをASEANの医療・高齢化イノベーションのハブとする」と宣言。

企画・研究において、ASEAN諸国に貢献できる存在を目指す。

現在、タイ国内には日本の老人福祉施設に該当するヘルスケア施設が約4,000カ所あるというが、政府は増やしていく方針だ。

増え続ける高齢者の生活レベル向上や雇用創出。

一方で高齢化が進むとともに毎年5〜7%の成長を続けるシニアマーケットの中で、新しいビジネスチャンスを模索する企業。

高齢化の波は、タイ社会の成熟化とともに大きくなっていく。

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