“タイで最も美しい祭り”と賞される、恒例の伝統行事。 裏では環境問題が渦巻くが、少しずつ変化の兆しも…。
10月31日、全国各地で「ロイクラトン」が開催された。今年はどこも規模縮小を余儀なくされたが、人々の切なる願いを乗せたクラトン(灯籠)やコムローイ(ランタン)が夜空に灯る様子は、例年以上に印象的に映った。
タイ政府は“ニューノーマル下での開催”を強調していたが、Twitter上では「#ロイクラトンをやめよう63(今年は仏暦2563年)」がトレンドワード入り。
保健局もまた、感染予防のため外出を控え、オンラインを活用した“バーチャル・ロイクラトン”を呼び掛けるなど異例の事態となった。
中でも中止派の大方の主張は、例年取り沙汰される“祭りのあと”、すなわち残骸(ゴミ)と化した灯籠やランタンによる汚染問題だ。
これらは川や海、里山を汚し、生態系にも悪影響を及ぼす。
このためバンコク都環境局では2012年より回収システムを導入。
夜を徹した作業により今年は49万2537個の灯籠を回収し、再生可能なゴミは有機肥料工場に送るというが、抜本策にはまるで届かない。
そこで注目されるのが、環境に優しい素材選びだ。
一般的な灯籠はバナナの葉などで造られるが、ICONSIAMの一角にある「Flower Pavilion」では今年、氷の土台にゼリーや果物をあしらった“溶けるクラトン”を販売。
氷が溶けると内容物が川の魚のエサとなり、海洋ゴミにもならないという。
こうした自然に還る素材が、近年は選択肢となりつつある。
伝統とは人の暮らしや時代の変化に寄り添い、ときに進化していくもの。
次の世代にも、この美しい文化が受け継がれていくことを願うばかりだ。