都とBTSの不協和音が浮き彫りになり 国を挙げたインフラ計画にも影を落とす
ASEAN最大のターミナル駅として、MRTなど10路線以上が乗り入れるバンスー中央駅を建設中であることは本誌既報の通り。政府は「首都圏鉄道マスタープラン(通称M-MAP)」に則り、2029年までに鉄道網を現在の約5倍となる全長509km・312駅に拡張することを明言。
コロナ禍にも負けじと延伸工事を続ける。
一方で経済中心区を貫き、在タイ日本人にも交通の要であるバンコクスカイトレイン(通称BTS)スクンビット線の運行に関し、停止の可能性が浮上しているようだ。
幾度の計画頓挫や紆余曲折を経て、BTSが開通したのはちょうど今のように年の瀬が押し迫る1999年12月5日のこと。
スクンビット線モーチット〜オンヌット駅間、そしてシーロム線ナショナルスタジアム〜サパーンタクシン駅間の計23駅が開業した。
しかし当時、政府やバンコク都の財源が乏しかったことからBangkok Mass Transit System(BMTS)社が建設を請け負って数年に渡り運営した後、管理者である都に所有権を譲渡するBOT(Build Operate Transfer)方式が採用された。
しかしこのほど、契約満了を待たずしてBMTS社からバンコク都知事に対し、2018年に新規開通したスクンビット線延線のモーチット〜クーコット駅間およびベーリン〜ケーハ(サムットプラカーン)駅区間分の運営事業費およそ80億Bの支払いを求める陳情書が提出されたという。
両路線は同社が共同運営を手掛けるが、折からのコロナやデモの打撃も重なり経営がひっ迫。
このため都から費用が支払われない場合、同路線の運行を停止ないし運賃を最大158Bにまで引き上げる措置を講じると主張したという。
これに対し、副都知事を経験し現在は民主党の副党首でもあるサーマート氏は都の財政もまた然りであるとして契約期間の改定など3つの懐柔策を提案した。
結局のところ、今回はBMTSグループの会長兼CEOであり、筆頭株主のカンチャナパート氏による「今は私情より国益と乗客の利益を優先せよ」との鶴のひと声で回避されたようだが、この先は果たして…。
国策が大言壮語に終わらないことを切に願う。