近代化の記憶を未来へ遺す

築130余年の旧税関庁舎を再生し、 5つ星ホテルとして新たな歴史を刻む

かつてバンコク旧市街には無数の運河が張り巡らされ、人々は小舟で往来していたという。

しかしそんな“水の都”も時代の変遷と共に姿を変え、近代化の礎を築いたラマ4世(1804〜68年)の命により国内初の馬車道・ジャルンクルン通りが誕生。

埋め立て事業は加速の一途を辿り、やがて西洋建築が建ち並ぶ町並みへと変貌を遂げた。

こうした歴史背景を持つチャオプラヤー川東岸エリアに2025年、新たなランドマークが誕生する。

土台となるのは西洋諸国との貿易拠点として開設された歴史的建造物「旧税関庁舎」である。

現存する国内最古のパッラーディオ建築を讃えた同建物は1888年に竣工。

各国の要人・王族らを迎える迎賓館としての役割も託され、1949年の庁舎移転まで60年以上に渡り活用された。

その後、水上警察署、消防署を経て閉鎖。

ここ数年は催事にのみ使用され、しばらくは寂れた状態が続いていたようだ。

同地を管理する財務局では近年、遺構の保存・再生を通じた新たな町づくりプロジェクトを発足。

2004年には事業者を募るコンペティションを実施し、名門セントラルグループやマンダリン・オリエンタルホテルグループなど8社が名乗りを上げる中で、BTS傘下の不動産投資会社・Uシティ社が借地権を獲得した。

その後一度は事業が暗礁に乗り上げるも軌道修正を図り、19年に同社主導の合弁企業と財務局の間で30年間の投資契約を締結。

今月1日には同局の関係者らが現地を視察し、ようやく本格始動へと漕ぎ着けた格好だ。

ホテルの敷地面積は1万3600㎡ほど。

既存の3棟を改装しレストランや会議室などの施設を併設する他、全80室の客室を備えた新館を増設予定。

完成すれば、「マンダリン・オリエンタル・バンコク」「ザ・ペニンシュラ・バンコク」といった高級ホテルが林立する川岸エリアの新しい顔となる。

「本事業の成功によって往時の活気を取り戻し、海外から再び多くの観光客を迎えられる日が来ると信じている」と語るのは、プロジェクトを率いるユタナー財務局長。

同局ではコロナ禍で落ち込む雇用創出と1億Bを上回る経済効果を見込んでおり、各方面から熱い視線が注がれている。

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