観光・スポーツ省が打ち出した妙案 ワクチンパスポートの行方はいかに
一時はそのまま静かに終息していくのかと思えた新型コロナウイルス。しかし、昨年12月には第二波が発生し、社会状況は再び厳しい場面を迎えることになった。
国内の各産業はその影響を受け続けているわけだが、とりわけ観光業は大きな痛手を受けている。
コロナ禍以前の2019年、タイを訪れた外国人旅行者数は約4,000万人。
それに伴う観光収入は約7兆円にも及び、GDPの約13%に達していた。
これはASEAN諸国の中で突出した数字であるのはもちろん、観光はタイ経済を支える重要なファクターであることを意味する。
タイ国政府観光庁(TAT)は懸命にさまざまな策を講じ、国内需要に集中した観光マーケティングを展開しているが、大きな収入源となる外国人観光客のタイ入国は依然として難しいままだ。
そんな中、観光・スポーツ省のピパット大臣が「ワクチンパスポート」という妙案を打ち出した。
これは、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた外国人に対し、隔離検疫なしで入国を認めるというもの。
このアイデアは、黄熱病が流行する国へ渡航する場合に必要な予防接種を受けた証明(イエローカード)に由来していると言われている。
このワクチンパスポートを、世界保健機構(WHO)が定める国際的ルールとして認めさせようというのが狙いだ。
同大臣の案では、同時に外国人観光客からの信頼を得ることを目的に、ホテル、レストランをはじめとした観光業従事者にワクチン接種を行うという。
代表的な観光都市であるバンコク、チョンブリー、チェンマイ、プーケット、クラビー、スラーターニー、ソンクラーの7都県で優先的に500万回分のワクチンを確保したいと考えている。
世界的にワクチン接種が始まりつつある現在、政府はASEAN諸国間で同様の政策を実施し、隔離検疫なしで行き来できるようにしていきたいとも述べている。
実際、世界29カ国の海外観光機関がワクチン接種開始を機にタイとの往来を早期実現させることを望んでいるという。
現在のところWHOは時期尚早としているが、ワクチンパスポートは、タイのみならず世界中の観光業界を救う一筋の光になるかもしれない。