都市開発の光と影とも言うべき、「立ち退き問題」。 その白羽の矢が立ったのは、創建237年の古刹だった…
今月頭、都内プラナコン区の「イアム・ウォラヌット寺院」は熱気に満ちていた。「鉄道計画により立ち退きを迫られている。
人々の心の拠り所を壊し駅を作るなんて!」との寺院のSNS投稿に呼応し、反対派が集ったのだ。
鉄道網の増設・延伸が急ピッチで進むバンコクだが、再開発には用地買収に絡む業者と住民との対立がつきもので、宗教施設とて例外ではない。
大通りの交差点に面する同寺院にはMRTパープル線「バーン・クンプロム駅(仮称)」の建設計画が浮上。
6年後には、旧市街を貫きノンタブリー県へと南下する沿線上の新駅が出来るという(同線タオプーン駅以北〜始発・クローンバンパイ駅は開通済み)問題はその解体範囲である。
住職によれば2013年、駅の出入口に係るとしてMRT側から境内の一部買上げと再建費用の支払いを打診された。
寺院側では本堂は残すという条件のもと、近隣への犠牲転嫁を鑑み渋々これを受諾。
しかし音沙汰もないまま丸7年が経過していた。
にも関わらず今年2月に突如通知が届き、MRT側は数日のうちに測量を強行。
これにより納骨堂や仏塔どころか本堂までも失うと知って窮状を訴えるに至った。
事態が明るみになると、当然ながらMRT側は猛バッシングに晒されることに…。
運輸省は見直しを勧告し、活動家らは環境評価を検証した上でその違法性を主張。
また、旧跡を保護する法に抵触するとの意見も殺到した。
結果としてこうした援護射撃が功を奏し、僅か1週間で計画が差し戻されたというのもタイらしいが、沿線上ではまだ100ライ以上を候補地として物色中とのこと。
周辺住民にとっては対岸の火事ではいられないだろう。