畑の中のあばら家、錆びた旧式家電、疲弊感すら漂う家族。 カメラに向かい、自ら支援を乞う“貧困女子高生”だったが…
現在、タイには経済的理由から就学・進学困難な学生が474万人おり、新型コロナの影響で増加の一途を辿る。給付金の支給など救済策の動きも広がるが、一朝一夕とはいかない。
「将来は医者になり、困っている人を救いたい。
でもウチには大学へ行くお金がないんです」。
これは9日に放送された、東北部の県立高校に通うAさん(18)のコメントだ。
彼女は今月初め、念願の医学部合格を果たしたばかり。
しかし一家の収入では進学が困難なうえに妹もおり、学業を諦めざるを得ない状況だという。
そこで特待生として彼女が通う塾が地元テレビ局に依頼し、大々的に寄付金を募ることに。
「医師」はタイで最も尊敬される職業であることから、彼女の元には放送から僅か3日間で卒業までに必要な学費の約8倍となる379万Bもの大金が寄せられ、その前途は洋々と思えた。
ところが、眼光鋭い“ネット特定班”らは拡散された映像の隅に写り込むiPadや高級ブランドの香水といった“苦学生には不相応”なモノを見逃さなかった。
また、彼女のSNSから次々と矛盾を炙り出し、歯列矯正用のワイヤーをつけたプロフィール画像も…。
人々が思い描く清貧さとは無縁の暮らしぶりが怒りのトリガーとなり、「#ニセ貧乏」を意味するワードがTwitterのトップに急浮上。
“貧乏を舐めるな”と言わんばかりに大炎上し、保安委員会までも乗り出す事態となってしまった。
後日、彼女は両親と共に騒動を詫びるも「バイト代で捻出したが困窮は事実」と釈明。
真相は明かされていない。
タイには「タンブン(徳を積む)」に則る社会的弱者への善行が浸透し、一般的に寛容な国民気質。
ただし、時には対象を見定めることも必要かもしれない。