最愛の妻に会いたい一心でアンダマン海を渡ろうと決心。
大海原にゴムボートを漕ぎ出した男の運命は…
1990年代終盤から2000年代初頭にかけて日本でオンエアされていた「電波少年」という番組をご存知だろうか。2人の若いタレントがスワンボート(池などに浮かんでいる足漕ぎボート)でインドからインドネシアを目指すという企画で、結局は10カ月を要し達成させた。
なんとも酔狂な話だが、これを思い出してしまうような出来事がタイのアンダマン海で起こったのだ。
タイ海軍第3艦隊が3月22日、アンダマン海シミラン諸島の西、沿岸から80km以上離れた海域でゴムボートに乗った一人の男性を救助。
ゴムボートの中には空の飲料水タンクとインスタントラーメンがあるだけで、彼は18日間も海の上を漂流していたという。海軍の調べによると男性はベトナム人(37歳)で、3月2日にインドのビザを持たないままホーチミンからバンコクへ入った。
空路でインド・ムンバイへ向かう予定だったが、インド行きの便に乗れないことがわかると、プーケットへ移動。
そこで水と食料を買い、ゴムボートに乗ってオールを漕いでムンバイまで行こうと企てたわけだ。
救助された男性が開口一番に口にしたのは「どうしてもインドへ行きたかった」というせりふ。
彼をそこまで突き動かしたのは、まぎれもなく妻への愛だった。
2年前にインド人女性と結婚したが、新型コロナの影響で離れ離れになってしまった。
なんとかタイへ来たものの、ビザがないために空路を断念して、プーケットからゴムボートを漕ぎ出したのである。
インドまでは約2000km。
まるで「電波少年」のような冒険を地で行ったわけだが、タイ海軍はその勇気を賞賛しているという。