名称を巡るリング外の攻防

「ムエタイ」なのか、はたまた「クンクメール」なのか。
タイとカンボジアの間で起きている起源論争とは…

「ムエタイ」といえば言わずと知れたタイの国技。

最近では米国五輪委員会にもその安全性・競技性が認められ、オリンピックの正式種目への道が拓けて話題となった。

しかしその裏側で、なんだか不穏な空気が流れている。それは、この5月に開催される東南アジア競技大会で、主催国のカンボジアがキックボクシングの競技名称を「ムエタイ」から「クンクメール(カンボジア語でクメールのボクシング)」へ変更。しかもその起源はカンボジアにあると主張しているのだ。

さらにタイのムエタイ・レジェンドであるブアカーオのことにも言及し、「先祖を辿れば、彼はカンボジア人だ」と、もはやいちゃもんレベルの発言まで飛び出している。それに対してタイ国オリンピック委員会(NOCT)は、同大会にキックボクシングの選手は出場しないとボイコットの姿勢。

カンボジアは対抗処置として、2025年にタイで開催される次回大会で「ムエタイ」として実施されるなら選手を派遣しないと警告している。

ダシに使われたブアカーオはこの件について「周囲がどういっても関係ないさ。ムエタイはオリンピック競技を目指そうとしているし、東南アジアレベルの小さな話にかまっている暇はないよ」と大人の対応。また、ブアカーオの所属ジムは「昨年6月にブアカーオがカンボジアでの試合に招致された際のギャラ220万Bは支払いがまだですよ」と小気味いいジャブを放った。

歴史的な事実はどうあれ、今回の一件でさらに「ムエタイ」が注目されることには間違いない。ただ、リング外の攻防がこれ以上エキサイトしないことを望みたい。

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