偽の警官が関わった事件といえば、日本ではなんといっても3億円事件が有名で、それは映画にもなるほど世間をゆるがす出来事だった。それと比べるとかなりちっぽけだが、タイでも偽警官がらみの事件が話題になっている。
ラヨーンビーチの沖合に浮かぶサメット島で9月17日、とある男性が飲酒運転で摘発されて島の警察署に勾留された。そこへ少し間をおいて一人の警官が現れると、「私の友人を解放しろ!」と署内中を怒鳴り散らすではないか。制服に着けている階級章は警察中尉でまあまあの位。本人曰く、バンコクの国家警察本部に勤務しており、友人が勾留されていることを聞きつけて、「交渉」のためにわざわざサメット島まで駆けつけたという。その中尉は「麻薬などの重罪でもないのだから見逃してやれ」と友人の解放を急がせた。
ところが島の警官だって脳天気ではなく、中尉のことを不審に思って警察のデータベースで照会すると、そこには中尉の名前がない。「退職されたんですか?」と中尉に聞くと「来年で定年だ!」と返答。そこで警察手帳の提示を求めると話をそらせるのだが、さらに追い詰めると中尉はついに自分が偽警官であることを白状した。
じつはこの“中尉”、ただのコスプレーヤーで、「きっと下級警官ならビビって友達を解放すると思った」と証言。ちなみにタイでは、一般人が偽装目的で軍や警察の制服を着用した場合、最高で5年の懲役が科されるという。助けてあげようとした友人の飲酒運転よりも、こちらのほうがはるかに重罪なのだった。