人口の95%が仏教徒だとされるタイ。そのため僧侶は特別な立場の人として、一般人から敬うべき対象として崇められている。例えば列車内の優先席は、妊婦や高齢者だけではなく僧侶も優先対象となっているし、寺院や街角で行われるタンブンという徳を積む行為もその一つだ。
ところが人々から「敬われる」立場を利用して悪行へと走る僧侶や、僧侶を装って人を騙す一般人が社会問題となっているのも確か。僧侶の格好をして、密出国を企んだ外国人が逮捕されるなんていうニュースもあった。しかし最近、そんな偽の僧侶にまつわる“ちょっといい話”が話題となっている。
それはカンボジア国境に近いサケーオ県のとある病院で、一人の僧侶が入院中の高齢の患者からタンブンを受けている画像が発端だった。ただ、その僧侶とは頭を丸め橙色の袈裟を着た病院の看護師。つまり偽の僧侶なのである。
ではなぜそんなことをするのかというと、認知症の患者を救うためだった。その患者は毎朝のように「タンブンをしたい」とせがみ、病室から抜け出しては徘徊を繰り返していたという。何度注意しても徘徊をやめず、病院職員などを大いに困らせていた。
そこでこの看護師が一肌脱いで、というか橙色の袈裟をまとい頭まで丸めて、毎朝「僧侶」に扮してベッドに横たわる患者のそばに寄り添ったというわけなのである。念願のタンブンができたことで患者の徘徊癖はピタリと収まったという。
ネット民の間では「本物以上!」と評判もまんざらではないようだ。